表紙
第三節 装填、照準、發射
- 第三十 射撃教育ト脚
- 射撃教育ニ方リテハ後脚ヲ使用セザル射撃ノ訓練ニ重キヲ置クモノナルモ後脚ヲ使用スル教育ヲモ併セ行フヲ要ス
- 第三十一 教育順序
- 一、固定目標ノ射撃(綿密ニ基礎教育ヲ行フヲ要ス)
ニ、移動目標ニ對スル教育
三、綜合教育 逐次綜合教育ヲ行ヒ程度ヲ向上シ遂ニハ實況ニ近キ教育ヲ行フモノトス
- 第三十二 特ニ練磨ヲ要スル事項
- 一、迅速ニ移動シ又ハ不意ニ現出スル視エ難キ目標ニ對スル射撃
ニ、劇動後ニ於ケル射撃
三、迅速ナル目標變換
四、装面シテ行フ射撃
- 第三十三 特ニ意ヲ用ヒテ行フベキ射撃教育
- 一、砲ノ動搖ニ抵抗スルコトナク自然ノ状態ニ於テ射撃スルコト
ニ、次發照準ヲ迅速確實ナラシムルコト
- 第三十四 空包射撃
- 空包射撃ハ爆音及發射ノ反撞ニ慣レシメ且發射後ニ於ケル照準竝ニ撃發ノ要領ヲ體得セシムル爲價値極メテ大ナルヲ以テ計畫的ニ之ヲ實施スルノ外他ノ目的ヲ以テスル空包ヲ使用スル總テノ演習ノ機會ヲ利用シテ此ノ目的ヲ達成スルヲ要ス
- 第三十五 据砲發射ノ際砲ヲ肩ニ著クル動作
- 其ノ要領左ノ如シ
一、體ノ方向ハ概ネ砲身軸ノ方向ト一致セシムル如クス
ニ、兩肘ハ之ヲ地ニ著ケ上體ノ重ミハ平等ニ之ニ懸ク
三、肩ハ凝ルコトナク自然ノ状態ニ在ラシメ確實ニ床尾ニ接著ス
四、後脚ヲ使用セザル場合ニ於テハ之ヲ折疊ミ左手ニテ下方ヨリ確實ニ握リ床尾ヲ肩ニ接著スル如ク保持ス
後脚ヲ使用(固定目標射撃)スル場合ニ在リテハ左方ヨリ之ヲ確實ニ握ル
五、握把ノ握リ方
１、右手ノ掌ノ「フクラミ」ノ部ト無名指及小指トヲ以テ後方ヨリ確實ニ握ル
２、食指及中指ノ第一節根ニ近ク或ハ第二節ヲ引鐵ニ掛ケ第一段ヲ壓ス
- 第三十六 装填動作
- 一、四番ハ槓桿ヲ引キ之ヲ舊位ニ復シタル後彈倉止把子ヲ押シ装填口蓋板ヲ開ク槓桿ヲ引クニハ復坐ばねノ張力特ニ強キヲ以テ右手ニテ握把ヲ前方ニ押シ左手及肩ニテ十分後方ニ引クヲ要ス
ニ、二番ノ位置
兩肘ヲ装填口前端ト概ネ齊頭ニ置キテ左後ロニ伏臥ス
三、彈倉ノ點檢
１、砲番號ト同番號ノ彈倉ヲ用フベシ然ラザレバ装填不能ノコトアリ
２、彈列正シキヤ、塵埃附著シアラザルヤニ注意ス
四、装填ノ爲注意スベキ事項
１、装填ハ迅速確實ニ實施シ得ルコトヲ主眼トス
２、右手ニテ彈倉後壁ヲ持ツコト
３、彈倉ノ口金前端ヲ下ゲ前方駐子ヲ装填口前壁ノ横溝ニ確實ニ嵌ムルコト
４、彈装後部ヲ強ク壓シ彈倉止ニ確實ニ鉤セシムルコト
５、一彈倉撃終レバ四番ハ彈倉止把子ヲ押シ二番ハ左手ニテ後ロヨリ彈倉ヲ握リテ脱シ右手ニテ實彈倉ヲ装填ス
- 第三十七 照準
- 一、照準ノ要領
１、照尺ヲ装シ据砲スルト共ニ左眼ヲ閉ヂ照準線ヲ正シク照準點ニ向クルモノトス
２、後脚ヲ使用シテ行フ射撃(固定目標ニ對スル射撃)ニ於ケル高低照準ハ後脚轉輪ヲ用ヒテ行フ
ニ、照尺及横尺ノ装シ方
１、照尺ヲ装スルニハ左手ノ食(中)指ヲ以テ照尺轉輪止ヲ下方ニ壓シタル儘拇指ヲ以テ照尺轉輪ヲ左右ニ廻ハシ所定ノ分畫ヲ指標ニ一致セシム
２、横尺ヲ装スルニハ左手ノ拇指ト食指トヲ以テ横尺轉輪ヲ廻ハシ指標ヲ所望ノ分畫ニ一致セシム
三、前後、脚轉輪ニ依ル砲ノ左右傾斜修正竝ニ高低照準ヲ爲ス場合二番及四番ノ動作ハ綿密ニ注意シテ教育スルヲ要ス
１、砲口ヲ上グルニハ四番ハ「上ゲ(下ゲ)」ト唱ヘ二番ハ兩前脚轉輪ヲ前(後)方ニ廻ハス
２、砲ノ左右傾斜ノ修正法 四番ハ低キ方ノ脚ヲ「右(左)」ト唱ヘ二番ハ右(左)前脚ヲ前(後)方ニ廻ハス
四、移動スル戰車ニ對スル照準教育
１、最初方向、高低ニ對スルモノヲ各別ニ行フ
２、次デ綜合シテ行フ
３、鑑査鏡ヲ用ヒ常ニ照準ノ正否ヲ檢スルコト必要ナリ
〔注意事項〕
１、移動目標ニ對スル射撃ニ於ケル砲ノ左右傾斜ノ修正ハ概略ニ止ムルヲ以テ満足スルヲ要ス是毎發照準ノ迅速ヲ要スルト之ガ命中ニ大ナル影響ナキヲ以テナリ
２、前脚ヲ移動スルコトナク射撃シ得ル正面ハ約八十度ナリ
- 第三十八 撃發動作
- 一、引鐵ノ壓シ方
引鐵ノ第二段ヲ壓スルニハ食、中指ノ運動ヲ臂ニ波及セシメザル爲右手ヲ以テ後方ヨリ確實ニ握把ヲ握リ食、中指ノ第二節ヲ屈ゲ等齊ナル力ヲ加ヘ遂ニ撃發スルニ至ラシム
ニ、撃發ノ要領
照準ヲ始ムルト同時ニ呼吸ヲ止メ正シク照準ヲ爲シタルトキ撃發シ得ル如ク引鐵ノ第二段ヲ壓ス
三、過失ヲ起シ易キ事項
１、恐怖心ヲ起シ引鐵ヲ壓スルニ方リ目ヲ閉ヅルコトアルヲ以テ注意シテ其ノ癖ヲ除去スルヲ要ス
２、照準線所望ノ點ニ達シタル好機ニ於テ急ニ引鐵ヲ壓セントシ爲ニ「ガク」引トナルコトアリ第二段ヲ壓シテ第一ニ示シタルガ如キ好機ニ於テ良好ナル照準ト共ニ實施シ得ザルベカラズ
３、發射ニ方リ其ノ反撞ニ抗セントシテ肩ヲ突出ス者アリ、空彈倉ヲ装填シテ發射セシムルトキハ此ノ過失ヲ容易ニ發見シ得ルモノトス
肩ヲ突出スハ恐怖心ノ結果ナルヲ以テ之ガ除去ニ注意スベシ
- 第三十九 射撃ノ方法
- 一、側方ニ移動スル戰車ニ對スル射撃
１、照尺 別命ナク五百米ノ照尺ヲ用フ
２、照準法 側方ニ移動スル戰車ヲ射撃スルニハ目標ノ稍〃前方ヲ照準シ始メ目標所望ノ位置ニ來リタルトキ發射シ得ル如クスルモノトス若シ此ノ際未ダ照準撃發シ得ザルトキハ若干之ニ追随スルコトヲ得ルモノトス
３、照準點 通常目標ノ前端下際トス
４、照準點ノ修正 稍〃遠キ距離ニ於テ而モ戰車ノ速度大ナルガ如キ場合ニ於テハ照準點ハ稍〃前方ニ修正シテ指向スルヲ可トス
５、目標移動ニ應ズル射手ノ動作
イ、毎發迅速、機敏ニ照準線ヲ移動シテ發射シ得ル如クスベシ
ロ、戰車ノ移動方向、速度等ニ依リ體全體若クハ肘ノ位置ヲ移動シテ照準ヲ容易ナラシメ無理ナル照準ヲ行ハザルヲ要ス
ニ、固定目標ニ對スル射撃
１、射向、射角、測定距離ニ天候、氣象ノ影響ヲ顧慮シテ所要ノ修正ヲ爲シテ決定ス
２、彈丸 通常榴彈ヲ用フ
３、照準點 通常目標ノ中央下際トス
- 第四十 發射法
- 指名射及各個射トス
一、指名射ヲ爲スニハ「撃テ」ノ號令ニテ四番ハ發射シ次發ノ準備ヲ爲ス
ニ、各個射ヲ爲スニハ例ヘバ「撃テ三發」ノ號令ニテ所命ノ彈數ヲ連續發射ス
- 第四十一 移動目標ノ射撃號令
- 移動目標ヲ射撃セシムルニハ例ヘバ左ノ號令ヲ下ス
先頭戰車
撃テ四發
四番ハ砲ヲ目標ニ向ケ槓桿ヲ十分ニ引キ之ヲ舊ニ復シ装填口蓋板ヲ開キ照尺ヲ點檢シ照準ス二番ハ装填ス
装填スルニハ右手ニテ彈倉後壁ヲ持チ彈倉ノ口金前端ヲ下ゲ前方駐子ヲ装填口前壁ノ横溝ニ嵌メ彈倉ノ後部ヲ強ク壓シ彈倉止ニ鉤ス
四番ハ發射ノ號令ノ後好機ヲ促ヘテ所命ノ彈數ヲ發射ス
一彈倉ヲ撃終レバ四番ハ彈倉止把子ヲ押シ二番ハ左手ニテ後ロヨリ彈倉ヲ握リテ脱シ次デ装填ス
射撃號令ノ一例左ノ如シ
| 順序 | 戰車射撃 | 固定目標射撃 |
| 目標 | 先頭戰車 | 堆土銃眼 |
| 射向修正量 |
| ニツ右ヘ |
| 要スレバ照準點 | 半幅前 |
|
| 射距離 | 別命ナク五百米 | 四百 |
| 發射法指名射 |
| 撃テ |
| 各個射 | 撃テ四發 | (撃テ三發) |
摘要
一、射撃ハ各個射ニ依ルヲ通常トスルモ固定目標ニ對スル射撃ニ在リテハ當初指名射ヲ用フベキヤ或ハ最初ヨリ各個射ヲ用フベキヤハ状況ニ依ル
二、移動スル戰車ニ對スル射撃ニ於テ五百米ノ照尺ヲ用フルハ彈道ノ關係上照尺ノ變換ヲ要セザルト近距離射撃ヲ主トスルガ故ナリ五百米ノ射距離ニ應ズル照尺ノ意味ニシテ固有修正量ヲ修正セバ採用照尺ハ變化スベシ
- 第四十二 固定目標ニ對スル射撃
- 固定目標ニ對シ射撃セシムルニハ例ヘバ左ノ號令ヲ下ス
堆土ノ右ノ機關銃
二ツ右ヘ
四百
撃テ(撃テ三發)
四番ハ射向修正量ヲ横尺ニ、射距離ヲ照尺ニ装ス
- 第四十三 不發
- 不發ノトキハ直チニ槓桿ヲ引キ彈藥ヲ抽出シ續イテ射撃ス
表紙
