超短波が治療に使用せられて以來、日尚淺きも此の放射線の有する特種治癒力は從來使用せられつヽありし凡ゆる種類の放射線に超越する能力ある事が證明され、今や世界の治療界に重きを爲すに到つたのである、吾人は此の有益なる治療法の一般的普及を企圖し多年研究しつヽありしが、今回余の發明に係るアコマ快癒機は極めて小型の超短波發生機にして、超短波の有する特種治療作用を利用するものである。元來超短波の最初の研究者たる彼の有名なるシヱレシヱフスキー J.W.Schereschewsky 氏が超短波の生物學的作用研究に用ひたるは素人無線家の使用する極めて小電力の發振器であつた。然もそれによつて今日の超短波治療學の基礎を爲した諸種の生物學的業績を發表したのであつた。されば獨墺にても多數の學者が温熱發生以外の特殊作用 Spezifische Wirkung について研究すうと共に我國の北海道、東北大學にても又温熱を除去した超短波の特殊作用について種々の有益なる研究が行はれた、就中超短波が植物性神經に及ぼす特殊の作用を發揮する事が證明された。

　超短波研究の一權威であるリーベスニー氏は凡ての疾患に對して微量無熱放射法の優秀なるを主張し、ウヰン大學教授ワイゼルベルグ氏は小型装置による弱力放射を唱導して居る。

　ワイゼンベルグ氏は同大學のホルツエル博士の助力により極めて小型の超短波治療装置を構作して過去四ヶ年間四千名の患者に使用し偉大なる成績を収め本年七月之れに關する一書を公刊した、即ち Die Kurzwellen-Schwachbestrahlung von Dr. Eugen Weissenberg, 1937. である。

　該書は同氏が曩に公刊せる「超短波治療法の基礎」なる書籍中に紹介せし以外の最近の實驗を公表したもので實に有益なる超短波療法の一指針である。

　余はかねて大型超短波装置の研究と共にワイゼンベルグ氏の使用せると同様の方式によりワイゼンベルグ伊藤式超短波放射器を製作した。(昭和十一年八月刊行超短波治療法に發表)。爾來幾多苦心改良の結果、茲に優秀なる小型超短波放射装置を完成しシユワツハー式超短波放射器(一名)アコマ快癒機と命名して我醫界に提供すると共にワイゼンベルグ氏の近著を譯載して偉大なる業蹟を紹介せんと欲するのである。

　昭和十二年九月