アコマ快癒機：快癒機の諸機種

型番	写真	ケース	管球	波長	出力	所要電力	価格	備考	出典
Ｈ型			(12A)*×4			20～30W		*:発見時	ML酒井氏
Ｊ型	１２２３	32cm×24cm	SD-408×4			30～40W	60円 60円 60円	家庭用患者用携帯用	現品資料1 資料2 資料3
Ｋ型	１２２１	36cm×30cm	アコマ450×4	6m			250円 250円 250円	医院用家庭用家庭用	資料1 資料1 資料2 資料3
Ｘ型Ｆ型	１	85cm×35cm	アコマ230×4	6m			580円 580円	医院用	資料2 資料3
A.M型	１	100cm×60cm	アコマ734A×4	6m	200W	400W	1200円	病院用	資料2
Ｎ型超Ｎ型	１				500W		1850円	満州皇帝満州皇帝	資料3 資料2 新無病長生術

　資料２によると、

...アコマ超短波研究所長伊藤賢治先生は...昭和七年以來超短波治療機の發明に沒頭し、多數の大型治療機を製作せり。...されば、第二段の問題たる家庭化について...一昨年來多數の試作品を製作し...最初壱臺貳百五十圓として提供せしも、あまりに高價なる爲め更に二百圓として發賣したが、到底一般的普及の困難なるを知り一臺百二十圓として製作に成功したが、それでも尚一般の購買を喚起するには充分でなかつた。されば昨年十二月斷然利益を度外視せる廉價金六十五圓にて發賣した結果、俄然人氣殺到...一般的家庭化に成功したものであつた。
我國無線雑誌界の權威「無線と實驗」十三年十月號誌上にラヂオ界のビツグ・ニユースとしてアコマ快癒機の發明が報導されてゐる。曰く、
「國産の大型超短波機を最初に製作發賣して、無線界を驚かした電療機界の奇才伊藤賢治氏は更に第二の飛躍を試みるべく「家庭用超短波治療機」を數年前より研究の處最近完成して目下盛んに製造中である。

また、資料２/３に転載された大阪毎日新聞の記事では、

...大型の病院用超短波治療機は...一回十分の治療に大抵二圓を支拂はねばならぬ有様である。
然るに今回發明されたアコマ快癒機はラジオ用眞空管を使用し獨特の巧妙なる設計にて製造され丁度ラジオの器械と同様に各家庭にて使用されるやう低廉な價格で發賣され...一般家庭に於て大に歡迎されるであらう。

これらの記述では、特定の機種名には触れられていませんが、1938～9年にかけて、小型治療器としてＫ型またはその先行機種が「家庭用」を意図して開発され、更にコストダウンを意図してＪ型(Ｈ型も?)が開発されたが、60～65円の価格帯に落ち着いたのは1940年末と読みとれます。Ｊ型は、資料２別紙に、

昭和十四年九月滿洲國宮内府よりアコマ器Ｊ型十二臺、同超Ｎ型一臺の御用命を賜りし...

とあるので、1939年半ばには存在していたことが知られます。この時点では120円あたりの価格設定だったのでしょう。おそらくＪ型の開発にあたっては、コストダウン策として、

回路の簡略化・標準化とともにラジオ用真空管(12A)と互換性のある球
小型蓄音機とよく似た木製ケース

が採用されたと考えられます。60円まで価格を下げるにあたっては、更なる部品コストの削減が行われた可能性もありますが、比較する初期Ｊ型の遺品がないので、想像の域を出ません。Ｊ型より出力が小さいＨ型については、遺品が存在したのは確かなのですが、資料には現れません。低コスト化の中で開発したものの、性能の点でＪ型に吸収されて製品ラインから消えたのかも知れません。

　使用真空管は、Ｊ型の遺品ではトウ(品川電機)の"SD-408"です。12A類似球(あるいは互換球)のようです。これとは別に「アコマ」ブランドの"SK-408"という真空管の存在も知られています。"SD-408"と同等球ではないかと思われます。他の機種で名前が挙がっている"アコマ450", "アコマ230", "アコマ734A"に関しては、今のところ手がかりがありません。

Ｊ型

	資料１別紙本機は最新に改良せられたる優秀なる超短波治療機にして人体患部の兩方面より同時に放射浸透せしめ得べく又同時に二個所の患部を治療する事も出來る實用的價値甚大なり。
１：内部に昭和16年10～11月の日付スタンプのあるもの。

２：銘板のロゴが蒲鉾形、横書文字が「右→左」のタイプ。	３：パネル面配置が左右逆のタイプ。銘板は２と同様。

Ｋ型

		資料１別紙本装置は大家族用にして強力なる超短波を發生し長時間の連續的應用に耐ゑる構造である。同時に二個所又は二人の治療が出來る。
１：銘板の文字は「左→右」。	２：銘板がないタイプ。

大型機


医院用Ｘ型。	病院用A.M型。	満州国皇帝用超Ｎ型。右の人物は伊藤賢治氏。

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