鳥辺野の、と仰せられるは、すべて墓所のこと。ただ人のことのみ思ひ、我無常のことは、ついうかうかとして、鼻に袖を当てれども、我身今にかく悪しき煙の匂ひになるぞ、との御示しなり。

• とりべの
  京都東山の阿弥陀峰西側が鳥辺山で、その麓が鳥辺野だが、この両者は必ずしも厳密に区別されていたわけではないようだ。西のあだし野、北の蓮台野と並んで京都を代表する葬送の地であり、とりわけ数多の貴族や僧侶がここで荼毘に付されたことから、火葬の煙は鳥辺山・鳥辺野のつきものになった。徒然草第七段の有名な「あだし野の露消ゆる時なく、鳥部山の煙立去らでのみ住みはつるならひならば、いかに物のあはれもなからむ」のように、無常の象徴でもある。