大津画

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大津画
- 呉竹の伏見より
  「どなたも御下りやござりませぬか。大阪八軒家、手前から出ます。
  　毎度御贔屓に有り難う。御護符や御蜜柑、
  　ちり紙はどうでござります。」
  もや綱解いて、舟出せば、
  「勘六さん、去の去の。上りかいな下りかいな、上りか下りか
  　わからんような目なら役に立たん。銀紙なと貼っておけ。
  　ぴかぴかと派手でいいわ。」
  うたた寝の手枕や。夢を結ぶの千両松。淀のあたりに夜を更かし、
  東の岸の遠渚。砧の音や男山。
  「ヤレ、医者の業札と、谷間の花は、取りに行かれぬ、先次第。
  　ヤレサ、ヨイヨイヨー。」
  橋本過ぎて、枚方や。
  「喰らわんか、喰らわんか、汁喰らわんか、餅喰らわんか。」
  喰らわんか、程なく佐多や、森口や。餅に汁粉に、塩梅よし。
  東が白めば、起きなれやと、浪速の八軒家。
- 新玉に、駆け来る勢いは、日の丸担いで、小栗判官。
  熊谷、敦盛呼び戻し。近江の国のお兼とて、佐々木の誉れに湖水渡り。
  単騎旅行しは、福富中佐殿。咲いた桜に、なぜ繋ぐ。
  知った尾根の、山の水。枯れ木は、塩原太助。確かに、物言うた。
  鈴鹿坂は、箱根八里は、馬に越す。いつも賑おう、稲荷の初乗り。
  （参）端哥どヾ逸第三編
  （参）諸國盆踊唱歌（伊賀）
  （参）日本音曲全集七（佐渡おけさ）
  （参）日本音曲全集四（小唄）
  （参）日本音曲全集四（うた澤）
  （参）はうた俗曲名曲集（まつくろけ節）
- 人の言う事で見たことない物は、
  臍が西国したのと、木で棚括るのと、狐を馬に乗せたのと、
  蛙の行列向こう見ず、夢で塀をば踏んだのと、
  悋気で角の生えたのと、煙草飲みの尻から煙の出るとやら、
  狼に衣を着せて、飯蛸ぱっちをはかすのと、
  御灯明の火で尻をあぶるのと、来年の事言やあははと笑う鬼。
- 西京で芝居狂言は、
  大仏が柳のおりゅうで、三十三間堂和田大八が金閣寺、
  雪姫壬生村が石川五右衛門で、本能寺が森の蘭丸で、
  桂川がお半長右衛門で、堀川お笙伝兵衛、
  五条橋が牛若弁慶で、大京寺がお三茂兵衛、
  御影堂が熊谷、八坂がとんとんの三吉で、
  島原が名古屋さんざん、六波羅あこやで、清水桜姫。
- 雨の夜に、しっぽりと、好いた同士の、差し向かい。
  隣座敷の爪弾きを、互いに見合わす顔と顔。
  身にはつまされ、目に涙。
  ああも辛気な苦界じゃと、膝にもたれて泣き沈む。
  いっそ殺してくだしゃんせ。ばからしや。死んで花実が咲くものか。
  いつまで苦労をさしてよいものかと、しっかと抱き締め。
  （参）はうた俗曲名曲集（口舌して）
  （参）はうた俗曲名曲集（二上り新内）
- 眉毛落として来る間もないに、髪はつぶされ簪は折られ、
  叩いて服に入るならば、お前に任したこの体、思う存分しやしゃんせ。
  しかしお前の癇癪が、よそで出よかと明暮悋気もふっつりやめました。
  機嫌直し、拗ねずとこちら向いて寝てくだしゃんせ。
  私が悪いと目に涙。かぶりつかれた男の心はどんなに嬉しかろ。
  （参）はうた俗曲名曲集（まかせたからは）
  （参）端哥どヾ逸第三編
  （参）日本音曲全集七（二上り新内）
- ▲裏へ三枚目に大津絵節あります
原文(26ウ～29ウ)
- 呉竹之。伏水より「となたもお下りや御坐りませぬか大阪八軒家手前から出ますまいど御ひいきニ有難うおこふやおみかんちり紙ハとうで御坐り舛」もやつな解て舟出せバ「勘六さんいのヽヽ上りかいな下りかいな上りか下りかわからんやうな目なら役ニ立つン銀紙なと張テおけひかとヽヽヽはでいでいヽわ」うたたね之手まくらや。ゆめをむすぶの千両松。淀の当りニ夜をふかし。東の岸のをちなきさきぬたの音や男山「ヤレゐしやの業札と谷間の花ハ取ニゆかれぬ先次第ヤレサヨイヽヽヨー」橋本すきて枚方や「クラワンカヽヽヽヽヽしるくらわんか餅クラワンカ」くらわんか程無クさたや森口や餅ニしるこニあんばいよし。東かしらめばおきなれやと浪花の八軒家
- あら玉にかけくるいきおいわ。日の丸関イテおくりはんくわん。熊谷あつもり。よび戻し。近江の国のお兼とて。佐々木のほまれニ湖水渡り。たんき旅行しハ福富中佐殿。さいた桜ニなぜつなく。しつたを子の山の水かれ木ハ。塩原太助。たしかに。物ゆうた。すヾか坂ハ。箱根八里ハ馬ニ越す。ゐつもにきおう稲荷の初乗り
- 人之云ふ事で見た事ない物ハ。へそが西国シタノト木でたなくヽるのと。狐を馬ニのせたのとかいるの行例向見ずゆめでへいおばふんだのとりんきで角のはへたのとたばこのみのしりからけむりの出るとやらおうかみニ衣をきせてゐヽだこはつちをはかすのとおとうめやうの火でしりをあふるのと来年の事いゆやあはヽヽと笑ふ鬼
- 西京でしばいけふげんハ大仏か柳のおりうで三十三間堂和田大八か金閣寺雪姫みふ村か石川五ヱ門て本能寺が森の蘭丸で桂川かお半長ヱ門デ掘川おしやう傳兵ヱ五條はしが牛若弁慶で大京寺がお三茂兵ヱ目いどが熊谷八阪がとんとんの三吉で嶌原が名古屋さんヾヽ六原あこやで清水さくらひめ
- 雨の夜ニしつほりとすいたどうしの差むかい。となり座敷之爪引を。たがいニ見合す顔とかほ身ニわ。つまされ目ニなみだ。あヽもしんきなくがいじやと。ひざニもたれてなきしづむゐつそころしてくだしやんせ。ばからしや。しんで花見がさく物かいつ迄くろをヽさしてよい物かとしつかとゐだきしめ
- まゆげおとして来まもないニかみハつぶされかんざしわおられたヽいて服ニ入ルならば。おまいニまかした此からだ。おもう。ぞんぶん。しやしやんせ。しかしをまいのかんしやくが。よそで出よかとあけぐれりんきもふつり止メました。きげん直し。すねずとこちら向イてねてくだしやんせ。わたしがわるいと目ニなみだ。かぶりつかれた。男の心ハどんなニふれしかろ
- ▲裏ヱ三枚目ニ大津ヱぶしあります

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