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「あらら、パパの目当ての骨董市がおまへんがな。」
「それは二十一日の弘法さんの縁日や。」 「何でその日に来まへんのや。」 「パパが無駄遣いせんように。」 「でもって、愛染はんは、どこにいたはんのんや。五重の塔か。」 「ちゃう。」 「あのでかい金堂か。講堂か。」 「ちゃう。」 「ほな売店か。」 「何あほなこと言うてんのや。こっちや。」 「こっちて、このあたりは弘法さんの屋敷の裏とちゃうか。」 「屋敷やのうて御影堂や。ほれ、こっちの方でいろんな仏さん拝んだはる人らがおるやろ。」 「なるほど、仏さんの長屋でんな。」 「またバチあたりなこと言うて。さ、はよ拝み。」 「はいな。えー、ママといつまでも仲良く暮らせますように。」 「ちゃんと真言唱えるんや。おん・まから・ぎゃばぞろ・うしゅにしや・ばざら・さとば・じゃく・うん・ばん・こく。」 「そんな長いの、よう覚えたな。」 「宝印帳に書いたある。」 「なんや。愛染はん、うちのママ、カンニングしてまっせ。」 「仏さんにチクってどないすんねんな。もう。」（バシッ） |