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「ほな、ママ、ひと風呂あびて来まっさ。」
「何アホなこと。ここはお寺やがな。」 「けど、置物だらけの廊下を、スリッパでぺたぺた歩いてると、何や温泉旅館みたいな感じがしまっせ。」 「宿坊やがな。ここに泊まって研修やらお参りやらできるんや。ここのお寺は三百五十人も泊まれるようになってるから、旅館みたいに見えるわけやな。」 「さよか....それにしても、ごっつうきれいな庭やがな。」 「愛染の庭いうらしいで。きょろきょろせんと、はよ本堂にお参りせな。」 「へいへい。こらまたえらいゴージャスなお堂で。」 「きれいにお祀りしてある。さ、はよ拝み。」 「はいな。えー、ママといつまでも仲良く暮らせますように。」 「ワンパターンやなあ。」 「そらそうや。どこの愛染さんも、愛染さんには違いないんやから、お願いすることは皆一緒やがな。」 「屁理屈言うてんと、貧乏脱出でも頼んどき。」 「ところで高野山には、他にも愛染さんがいたはるんでっか。」 「ようけいたはるよ。札所やないけど、伽藍にも愛染さんのお堂があるし、次の札所の金剛三昧院も高野山や。他にも山内のあちこちに。」 「ほな、いろいろ遠いとこ回らんで、高野山だけで巡礼しまひょ。」 「また怠けたこと言うとる。パパやっぱり仏罰もろとき。」 |