近世佐井寺観音考

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出典：歌舞伎年表　第一巻・第二巻　1956/8/30-1957/4/30　伊原敏郎　岩波書店

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• 元禄六年（癸酉）（1693）
  • 大阪、岩井半四郎座、二の替り「佛母摩耶山開帳」。百五十日間打続く。三月十四日より卯月十四日まで、摂州摩耶山七面観音開帳。それを當込みし狂言なり。
    • 弟出羽之介（座元半四郎）
    • 根来のかくはん（村山平十郎）
    • 明石の源作（杉山勘左衛門）
    • 弟友之助（左源太）
• 元禄七年（甲戌）（1694）
  • 同座、「さい寺の開帳」。
• 享保元年（丙申）（1716）
  • 二月三日、大阪、岩井半四郎座（角座）、二の替り「摂州佐井寺開帳」。作者佐保山彦左衛門。
    • 高安市之進（傳吉）
    • 同女房おるい（左馬之助）
    • 若殿仙五郎（半四郎）
    • 佛庄作（新五郎）
    • 浪人左助（道右衛門）
    • 親左次兵衛（嘉十郎）
    • 水茶屋お雪と傾城花紫の姉妹早變り（万菊）
    • 乳の人おもよ（千代之助）
  • 京、布袋屋座、三の替り「けいせい仙人鏡」。
    • 家老和田崎万右衛門（京右衛門）
    • 白石友之進（次郎左衛門）
    • 佛久助（源三郎）
    • 若殿明石左衛門（甚兵衛）
    • せと右衛門（園右衛門）
    • 入舟金七（南北三ぶ）
    • 奴茶屋女房（わか浦）
    • 女郎頭おうら（重巻）
    • 傾城玉嶋（亀之丞）
    大阪岩井座の「佐井寺」と同狂言。
• 享保十一年（丙午）（1726）
  • 二月一日（三月十四日）、大阪、山本座（中）、二の替り「佛母摩耶山開帳」。
    • 浪人千塚又八（京四郎）
    • 小松原頼母の介（新九郎）京にて三五郎の役の通り。
    • 指物屋金四郎（彦五郎）彦三郎の役。
    • 骨つぎ傳兵衛（四郎五郎）
    • 青龍軒弟平馬之丞（義平太）松本友十郎の役。
    • 鳥さし太兵衛（彦四郎）八塩幾右衛門の役。
    • 傾城うてな（玉妻）菊川喜代太郎の役。
    • 家老六郎左衛門女房（亀之丞）菊之丞の役。
    • 永岡六郎左衛門（中村勘十郎）京にて廣次。
    • 花紫兄筑波助十郎（大谷彦三郎）杉山勘左衛門の役。
    • 亀井蔵右衛門（市川民五郎）岩井半四郎の役也。

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出典：歌舞伎・浄瑠璃外題事典　1991/7/22　野島壽三郎編　紀伊国屋書店

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• さい寺の開帳
  • 通称「佐井寺」。
  • 別題「佐井寺開帳」。
  • 元禄７年大坂・岩井半四郎座で初演。
• 仏母摩耶山開帳
  • 通称「仏母まや山」「摩耶山」「まや佐井寺」「佐井寺の開帳」。
  • 別題「まや佐井寺の開帳」。
  • 元禄６年３月、京・万太夫座で初演。
  • 梗概
    • 六田家の総領掃部は室の遊女異国と馴染み放浪の身となる。継母と弟がお家の横領を図るという騒動に、開帳を絡めて描く。

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出典：大歌舞伎外題年鑑　編者不詳

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角之巻
享保元　申歳ヨリ　　　座本　岩井半四郎

戌十一月二日ヨリ顔見世 眞赤祭猿祝 十二月廿五日ヨリ 楠正成軍配團扇 申二月三日ヨリ 佐井寺開帳 五月五日ヨリ切付 心中平野車 七月廿八日ヨリ 浅間嶽後面影

中村新五郎 岩井半四郎 山本彦五郎 宮崎傳治 佐川文蔵 大嶋嘉左衛門 大嶋道左衛門 佐の川萬菊 姉川みなと 大嶋吉五郎 富澤千代之助

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中之巻
享保十一　午顔見世　　　座本　山本京四郎

十一月十日ヨリ 寶來山嫗松 十二月廿日ヨリ 氷腹帯命要 三月十四日ヨリ 佛母摩耶山開帳 七月廿七日ヨリ 敵討勘助嶋 九月七日ヨリ 容競出入湊

中山新九郎 中村四良五郎 市村民五郎 中村勘十郎 山本彦四郎 宮崎義平治 市の川彦四郎 山本京四郎 山下龜之丞 嵐金三郎 富岡政太郎 山下松三郎 芳澤長之助 芳澤玉妻

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出典：芝居晴小袖　1716(正徳六=享保元)年四月　歌舞伎評判記集成　第六巻　1974/10/21　歌舞伎評判記研究會編　岩波書店

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• 京注文
  • （略）
  • 立役之部
    • 實方功者之論
      （略）巻頭の山下京右衛門殿、當二の替正月十五日より出られ大當りにて、三の替もいよヽヽ評判よし。（略）三の替も又左のごとく。山下殿に少計の役わりにて。篠塚殿の大役殊勝のいきかた也。（略）
      • 上上吉　山下京右衛門　ほていや座
        （略）三の替けいせい仙人鏡に。家老和田崎万右衛門の役。かたりのあいてにて金をやらるゝせりふ。又少計にて至極の所（略）
      • 上上吉　篠塚次郎左衛門　ほていや座
        （略）三の替けいせい仙人鏡に。白石友之進とて。かたりに來り。山下殿とのせりふ。中に馬子の三蔵。大坂にて大鳥道右衛門殿せられしとは大きに思ひ入よし。しかしあたりは大鳥殿と牛角
      • （略）
    • 若實達者の論
      （略）
      • 上上吉　坂東彦三郎　ほていや座
        （略）三の替はみなと川たくみの介弟たもんきり波いく世殿に若殿おはせ。よみうりのやつし。いろはで歌をよまるゝ所。ひいきのおほいゆへよいヽヽとは申が、小堅見へてのりがうすし。後ニ新三殿切腹のばへ上下大小て出らるゝ所は見事ヽヽ
      • （略）
      • 上上　片山小左衛門　ほていや座
        （略）三の替は山下殿の弟。和田崎浦之丞と成。序の夢のあいだは順禮姿にて駕にのり。百人首殿義平太殿を相手にしてのせりふ先よし。それよりこも僧迄いつものかく也
      • （略）
    • やつし方風流の論
      （略）
      • （略）
      • 上上吉　百人一首源三郎　ほていや座
        （略）三の替は左助といふ武士ながら。ほとけ久助と。いふ駕かきのやつし。だいばの六兵へ宮崎義平太殿と駕をかいて出。二足ゐてはさあ肩せふヽヽヽヽは。誰もかれもせられし格ながら。みぢんも是であてる心なしにせらるゝがよし。其後姫を同道にて高松の家に來り。上下大小にて夢中の僉義。なづみよくせらるゝ。男つき迄が見事じやと世間一とうにうれしがります此役は大坂岩井座にて中村新五郎殿のせらるゝ所。新五郎殿と一つ口にはいはれぬはづみかヽヽヽヽ
      • （略）
      • 二代の座本　大和屋甚兵衛　ほていや座本
        （略）三の替はいひ名付の若殿あかし左衛門。かつこうがよくうつりました
      • （略）
  • 實悪之部
    （略）
    • （略）
    • 上　中村新三郎　ほていや座
      （略）三の替は悪の気なく。山下殿の甥みたらい傳六と成。なじみのけいせい龜殿を女房に持。篠塚殿ニゆすられせかるゝ所よし
    • （略）
  • 敵役之部
    （略）
    • 上上吉　澤井薗右衛門　ほていや座
      （略）三の替はなぐりせと右衛門侍悪少計古風なかた氣○ぱつとちれや山櫻
    • 上上　宮崎義平太　ほていや座
      （略）三の替は伯父悪後室の弟くる嶋半平と成。夢に百人一首殿と相かたにて大ばの六兵へ。初日にも見物の火をかりてたばこをのみ。つこうどに禮をいはるゝことば。其まゝの駕かき。夢さめ侍悪。百人首殿來らるゝをみて昔ばなし。片山殿を見夢中の侍とぎせい見事大坂ハ文蔵殿役宮崎殿よいぞ
    • （略）
  • 道外方之部
    （略）南北殿は二代男二の替三の替にておかしさもまさりき。松嶋の一景又おかし
    • （略）
    • 上上吉　南北三ふ　ほていや座
      （略）三の替入舟金七と成。燈心のおもいはないとの詞よし。此出はにも拍子舞花やか也
    • （略）
  • 親仁形之部
    • 上上　作者安達三郎左衛門　ほていや座
      （略）三の替は室住新右衛門わか浦殿の親。しの塚殿のしうとゝ成。武士の果にて物がたい所ようござった
    • （略）
    • 一上　塩瀬與左衛門　ほ　三の替　わだ崎大かくと成
  • 花車方之部
    • （略）
    • 一上上　爲川小兵衛　ほ　三の替　傳六新三殿母の役
    • （略）
  • 若女形之部
    （略）
    • やつし女こなれの論
      （略）
      • （略）
      • 上上吉　袖崎和歌浦　ほていや座
        （略）三の替やつこ茶やの女房。初心にてならぬ事ながら當りはうすし。後ニごくもんのくびと成。しば原へおりるしかけはやい事ヽヽヽヽ
      • （略）
    • けいせい風くらゐの論
      （略）三の替も龜殿の色がうすらぎて當リがかいなし。（略）
      • （略）
      • 上上吉　松本重巻　ほていや座
        （略）三の替女郎頭おうら。大坂で千代之助殿役二刀のはたらき見事ヽヽ
      • 上上吉　山下龜之丞　ほていや座
        （略）三の替けいせい玉嶋。思ふ男へうけられてよめ入すいないきかた
      • （略）
    • 若女郎品物の論
      （略）
      • （略）
      • 上　篠塚政之助　ほていや座
        （略）三の替まんじゆのまへ段々ようござる
      • （略）
  • 若衆方之部
    • （略）
    • 中ノ上上　富澤長太夫　ほていや座
      （略）三の替成尾丹次郎役
    • （略）
• 江戸注文（略）
• 大坂注文
  • （略）
  • 立役之部
    （略）
    • （略）
    • 左四の座　上上吉　宮崎傳吉　半四郎座
      （略）二の替佐井寺開帳高安市之進と成。けいせいをわが娘分にして。おいの龜井平左衛門殿へ祝言さゝるゝせりふ打ついた實。寳の觀音をかたりにとられ。やしきへ行切腹のばのがれて。中にこも僧姿。かたり大鳥殿まご姿を見付ふみつけなわかけ。さんヾヽにむね打し。親迄ころされ敵なれ共大事のせんぎ有ゆへ。せめてはらいせにむね打すると。せいてのせりふ功者なれ共古風ゆへ花やかならず
    • 右四の座南計　上上吉　岩井半四郎　座本
      （略）二の替親半四郎仕候佐井寺開帳。御町中様御望に付て新狂言ニ仕替御目ニかけ申候と。かんばんに書付ての狂言仕組能大當り。若殿仙五郎と成ぶたいのはふよりわに口のおを持飛おりらるゝ所かるし。下へおり文蔵殿とくんづころんづはたらきで大でけ。功者過た宮崎殿と。おぼこ過た岩井殿と。左右ならずや
    • （略）
    • 上上　中村新五郎　半四郎座
      （略）二の替佐井寺開帳にほとけ庄作かごかき姿。相かた文蔵殿とくんづころんづして。水中へながれ入はたらきよし。中入の後上下大小勝右門と成。あね姫をつれやしきへ來り。文蔵の顔見いせんかごかきの相かた。なげ足してのはなしよし。半四郎座立役の立物は此人
    • 上　山本彦五郎　半四郎座
      （略）二の替佐井寺にさいもんかたり傳兵へ。作彌殿とつれざいもんで大でけ。本名原田左門。傳吉殿平左衛門どの切腹の太刀取と成。たすけらるゝ所よし。中に順禮のなまり詞でけました。かぶき藝に打つきました
    • 上　中村城右衛門　平八源太座
      　　市村竹右衛門　半四郎座
      （略）市村殿は二の替順禮大介と成。かごかきとの云分。やしきへ帰りおちの人若君なんぎの□へ飛出て。あら實でけました。
    • 中ノ上上　澤野八五郎　　　長十郎座
      中ノ上上　龜井平左衛門　　半四郎座
      中ノ上上　山下三木右衛門　平八源太座
      （略）龜井殿はなるせ彌四郎と成。大鳥殿とのせりふ今少かいなし。（略）
    • （略）
  • 實悪之部
    • 上上吉　大鳥道右衛門　半四郎座
      （略）二の替佐井寺開帳に、浪人左助と成。かたりいひて金五百両と。寶の觀音を取樋の口よりぬけ出。傳吉殿親をつきころしての中入大當り。中はまご姿。かたりあらはれあらなわにてくゝられ。しぶかみ包の大小を見せ。本侍じやとわろびれぬ所。手づよく大あたりヽヽヽヽ
  • （略）
• 敵役之部
  • （略）
  • 上上　佐川文蔵　半四郎座
    （略）二の替佐井寺に初はがまんの六兵衛といふかごかき。姫をさしころし。相かた新五郎殿とつかみあひ水中へ入迄は夢。中入の後當みだいの里の子源蔵と成羽織大小。相かたの新五郎どの侍姿にて。姫をつれ來りし時のせりふ慥にしてよいぞヽヽヽ
  • （略）
• 道外方之部
  • 上上吉　大嶋嘉十郎　半四郎座
    （略）二の替佐井寺開帳ニ水茶や万菊殿親左次兵へと成。むこ大鳥殿けいせい馬にのせもどりしを、やうす聞たがらるゝ顔つきおかし。此たびは親仁しらが役で。吉の頭が少白ござる
  • （略）
  • 一上　さほ山彦左衛門　半四郎　同　岩井座狂言作者藝休
  • （略）
• 親仁方部
• 花車方之部
  • 一上上　高嶋尾上　半四郎　二の替　あら木のこうしつと成
  • （略）
  • 一上上　よし川八兵衛　半四郎　同　平左衛門殿母役
• 若女形之部
  • （略）
  • 右一の座　上上吉　佐野川万菊　半四郎座
    （略）二の替佐井寺開帳ニ水茶屋おゆきと成。前だれ姿。おつと大鳥殿まご姿でもどりしを。傳吉殿彦五郎殿うしろより。ふみつけなわかけてのせんぎかなしがり。私にお預ケくだされ。といおとしませふと内へつれ入にがし。其とがにて首打れごくもんにかゝり。娘しば原にくゝられ代官ころさふといふ時。めをひらき聲を出し。くすの木へうつり。しば原迄首つるヽヽとおりて娘のなわくいきる所。しかけはやく大當り。夜明がらす首つゝくを。娘かなしがりおふて打ふす間に。いもと花むらさきけいせい風道中にて來らるゝ。そのはやさ。あねと。いもと二役大に當りお手がらヽヽヽヽ
  • （略）
  • 左三の座　上上吉　富澤千代之助　半四郎座
    （略）二の替佐井寺開帳におちの人おもよと成。伯父文蔵殿悪にて若君をころさんとする時。手ばしかくいだき取やりにてつかれながら。若君をれんじのまどよりさし出し。新五郎殿へ渡したすけらるゝ所よし。藝すわりましたやうなが。あぶなげはないぞ。
  • （略）
  • 富澤左馬之助　半四郎　同　傳吉殿女房おるいと成
  • （略）
• 若衆方之部
  • （略）
  • 上　山本作彌　半四郎　二の替　さいもんかたり傳七と成
  • （略）
  • 一中ノ上上　花井松野　半四郎　二の替　さゝ木いおりと成
  • （略）

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出典：役者色茶湯　1717(享保２)年正月　歌舞伎評判記集成　第六巻　1974/10/21　歌舞伎評判記研究會編　岩波書店

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• （略）
• 近日より顔みせ　岩井半四郎　座本
  みなと大じん　徳をとろより名をとれじゃ。岩井半四郎殿といへば。しらぬ筑紫のはて迄も扇車の紋所を見しりに。立子もいざる子も佐井寺の開帳ヽヽと評判いたせしが。此度四代目の半四郎殿。御親父の十七回忌追善芝居いたされたが。ふしぎと佐井寺の開帳なされ。前に十倍の大當。（略）
• （略）

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近松門左衛門「仏母摩耶山開帳」

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近世佐井寺観音考