• 開業当時の各駅については、末尾の資料参照。豊津〜千里山間は少し遅れて開通しているが、これは豊津駅の北にあった垂水村の墓地が路線をさえぎっており、それを移転（現在線路東側の斜面にある墓地がこれ）させるのに手間取ったためと言われている。
• 北大阪電気鉄道は、更に吹田から片山方面を通り東海道線と併走する支線、および、豊津から小曽根・熊野田を経て阪神急行電鉄（＝阪急。前身は箕面有馬電軌鉄道）の箕面駅に至る支線を計画したが、これらはいずれも認可を受けることができなかった。
• 現在の阪急の路線としては、梅田〜河原町が京都線の本線で、天六〜北千里が千里線となっているが、これは、歴史的な成り立ちとは食い違っている。淡路〜天六間、淡路〜高槻間は、後に接続されたものだ。
• 当初の計画では、淀川を渡って天六の市電と接続することを意図していたが、その実現が思うにまかせなかったため、開業時点での路線は、大きく西に振れることになった。祟禅寺以南、淀川北岸を西行するやや不自然な路線は、こうした事情によってできたものだ。
• 自力で淀川を越えることができなかったため、既に梅田までの路線を持っていた阪急の十三駅に接続し、乗り替えによって、かろうじて大阪市街へのルートを確保した。
• それでも資金難等の障害が解決できず、吹田以南は、旧東海道線の廃線敷地を安く払い下げてもらうことで、路線敷設が可能となった。
• 当時は、新規路線の開業には、鉄道院の認可が必要だった。鉄道院は、許認可権を持ちながら、省線（国鉄）を保有していたので、それと競合する可能性のある路線には容易に認可をしなかった。北大阪電気鉄道の発起人達は、当初は千里山に大霊園を造成し、大阪市内から「葬式電車」を走らせるという奇妙な構想（彼等はそのために「大阪の死者増加数は前年比４倍」などという怪しげなニーズ論を展開している）を前面に掲げた。その申請が悉く却下の憂き目を見たため、今度は「千里山に大住宅地を建設し、その住民を吹田に運ぶので、東海道線の乗客も増える」という論理を持ち出した。しかし、鉄道院は、大阪〜吹田間の競合によるマイナスの方を大きく見たためか、やはり難色を示し続けた。最終的には、内閣総理大臣から鉄道院総裁への書簡（現存する）によって、特別に認可が決裁されることとなったが、総理に対して誰がどのような工作を行ったのかは謎とされている。
• こうした経緯について、佐井寺村（千里山住宅地の開発対象となった河田山桃林の所有者のほとんどを含む）の伝承では、異なった解釈がある。すなわち、当初から住宅開発の意図があったにもかかわらず、「墓地だ」として買収価格を安く抑えようとしたのだろうというものである。「葬式電車」構想の奇妙さから見て、この佐井寺村側の解釈は、十分根拠があるように思える。

• 北大阪電気鉄道の経営は苦しかったと言われる。千里山住宅地の販売状況の不振（当初目標の1,000戸に対して300戸）とともに、鉄道事業そのものも、十分な収益を上げるには至らなかった。
• 一方、淀川西岸を東海道線と並走して京都〜大阪を結ぶ路線は、いくつかの事業体がねらっていたが、既に淀川東岸の路線を持っていた京阪電車の関連会社「新京阪鉄道」が認可を得た。新京阪は、まず1923年に、経営難の北大阪電気鉄道を吸収合併し、長柄の鉄橋を建設して、1925年に、北大阪電気鉄道以来の懸案であった天六への路線、すなわち阪急に依存しない大阪市街へのルートを確保した。以降、淡路〜高槻間の開業を経て、1928年には京都西院および嵐山までの路線を完成させた。
• こうして、現在の阪急千里線と京都線は、新京阪によってほぼ完成された。経営する社名が変わっても、千里線・京都線は、戦後の一時期まで「新京阪線」と通称され続けた。
• 1930(昭和５)年、京阪電気鉄道は新京阪を合併する。これにより、京都〜大阪間の私鉄路線は、淀川の東西ともに、京阪が独占することとなった。
• 1934(昭和９)年９月の台風で佐井寺山田寺が倒壊したとき、電鉄会社が寺を買い取ろうとした話が、佐井寺に伝わっている。佐井寺村では、ほとんどの住民が真宗寺院の檀家で、真言宗の山田寺の檀家はわずかに２軒、村としても再建費用に苦慮していた。そこに目を付けて、佐井寺観音として札所にもなっていたこの古刹を千里山駅近くに移転し、参拝客を乗客増に結びつけようとする企画だったようである（これに先立って、京阪電鉄は、1929(昭和４)年頃から、寝屋川市香里園に成田山不動尊を誘致する企画を進め、成功を収めている）。一旦は佐井寺村も受諾に傾きかけたが、本村からの文化遺産の流出を憂える人々が巻き返し、結局は佐井寺村での自主再建となった。逆に佐井寺村からは、千里山から東北方、佐井ヶ原方面への路線延伸の働きかけもあったが、こちらも実現せずに終わった。

• 1943(昭和18)年、戦時体制下の統制強化・輸送力増強を意図して、阪急と京阪は合併することとなる。これにより、現在の阪急路線と京阪路線のほぼすべてを所有する巨大電鉄会社が出現した。
• 1944(昭和19)年、それまで十三止まりであった新京阪線（現阪急京都線）からも、直接阪急終点である梅田に乗り入れることになった（淀川を渡る鉄橋が増設されるのは戦後）。阪急中津駅が、京都線にはなく、並走する宝塚線・神戸線にのみあることは、現在の姿だけ見ると奇妙なことのように思えるが、この延伸の経緯から見ると、さほど不思議なことではない。
• 前項の梅田延伸は、戦後に二つの影響を及ぼしたように思える。一つは、阪急と京阪の再分離時に、千里線・京都線が阪急に所属する結果を導いたこと。もう一つは、天六行きに代わって梅田行きが「本線」と意識されるようになったことである。

• 1949(昭和24)年12月１日、京阪神急行電鉄から現在の京阪電車が分離独立する形で、再び二社に分かれる（末尾の資料）参照。このとき、かつての新京阪に属する路線は、京阪電車に復帰することなく、阪急電車の所属となる。結果として、戦中戦後の数年間の合併分離騒動の中で、京阪は新京阪線をまるまる阪急に「取られる」ような形になった。
• この分離劇の内幕は、よくわからない。しかし、分離の半年後に、千里山遊園（千里山パーク）が閉園することになった理由の一つが、この分離にあたっての阪急と京阪の間の何らかの取引だったのではないか、と想像することもできる。
• 資料にもあるように、分離当時から現在に至るまで、千里線は京都線の支線と見なされている。しかし、分離当初の「千里山線」がいつから「千里線」となったのか、また、天六〜淡路間がいつから千里線に属するものとされるようになったのかは未考。
• 1955(昭和30)年頃、阪急が北方への路線延伸用に確保していた約800坪の土地を、吹田市に誤って(?)寄付してしまう珍事があったらしい。ちょうど千里第二小学校の児童数増加に頭を悩ませていた吹田市は、この土地の返還の交換条件として、小学校の南に阪急が所有していた土地のうち、3000坪を寄付することを要求した。交渉に臨んだ当時の阪急専務は激怒し、決裂するかに見えたが、結局2500坪で妥協することになったという。現在の千里第二小学校の鉄筋校舎敷地とグラウンドは、この時に阪急から「強奪」した土地である。
• 千里ニュータウン建設に際して、阪急は現在の東寄り路線ではなく、現南千里−現千里中央に相当する区間を斜めに通り、箕面に接続する路線を希望していたと言われている。しかし、地下鉄御堂筋線の延伸計画との兼ね合いで、千里線は山田の西を通過して北千里に至る現在のルートを採り、別途阪急と関電それに大阪市が出資して、北大阪急行電鉄を設立することになった。
• 北千里までの路線が開通した時点でも、箕面方面への延伸の企図はあったらしく、北千里以北に路線用地が確保されていた。結局、この計画も実現されず、千里線沿線の住人にとっては、箕面も宝塚も「ちょっと遠いところ」のまま、現在に至っている。

• 現清和園町。1921年の開業時、旧東海道線敷地を利用して、駅と車庫が作られた。後に「吹田」。1964年に「市役所前」（現「吹田」）に統合され廃止。

• 後に「市役所前」。1964年に「吹田」（旧「東吹田」）を吸収して「吹田」となる。

• 現関大一高正門前の踏切北側。後に「遊園前」。後に「千里山遊園」。戦時中1943年に「千里山厚生園」(戦後「千里山遊園」に戻る)。1950年８月１日より「女子学園前」。おそらく翌年には「花壇町」。1964年に、当時の「大学前」との中間地点に移動・統合され「関大前」。

• 現関大正門西の踏切南側。1964年に、当時の「花壇町」との中間地点に移動・統合され「関大前」。

• 現南千里。1967年北千里まで延伸時に改名。

• 十三
  • 阪神急行電車参照、
• 南方
  • 【五月寺】停留所の北五丁、字西にある、真言宗、光用寺と号ふ、行基の開基、境内に躑躅の大株が多い、
• 祟禅寺
  • 【祟禅寺】停留所の西北三丁にある、曹洞宗、凌雲山と号ふ、徳叟禅師の開基、本尊は伝教大師作の釈迦牟尼仏で、その他聖徳太子作の安産観音、弘法大師作の弁財天、李龍眠の涅槃像等国宝になってゐる、正徳五年（凡そ二百十年前）親の敵生田伝八郎の奸計に罹って見るも無惨な返り討に遭った、大和郡山の藩士遠藤兄弟の墳墓がある、其他同兄弟が用ひた武器等を蔵してゐる、
  • 【中島惣社】祟禅寺の西近くにある、往昔豊崎皇居の鎮護社であったといふ由緒ある社だ、附近の地を祟禅寺馬場といふ、
  • 【柴島水源池】停留所の傍にある、大阪市民百五十萬を養ふ上水道の水源池だ、
• 下新庄
  • 【瑞光寺】停留所の東八丁にある、詳しくは東海道線吹田駅参照、
• 東吹田
  • 【高濱神社】停留所の東三丁にある、東海道線吹田駅参照、
• 西吹田
  • 【朝日ビール会社】停留所の東北一丁にある、
• 豊津
  • 【垂水の桃林】停留所から次駅花壇前に至る山手一帯の桃林で花の頃は観賞客で中々賑ふ、停留所の西三丁に大巳貴命、少彦名命を祀る【垂水神社】がある、
• 花壇前
  • 【千里山花壇】停留所の前にある丘陵の遊園地だ、
• 千里山
  • 佐井寺の桃林の名で知られてゐた河田山は今は住宅経営地になつて昔の美観は失はれた、
  • 【山田寺】停留所の東北十丁佐井寺にある、津国第廿九番の札所、行基の開基、本尊十一面観音を安置してゐる、今の堂は土地の豪農前田氏の祖庄作といへる人が観音の霊夢に依つて正保年間に再興したものといふ、後門の丘陵に延喜式内の古社【伊射奈岐神社】がある、

今般京阪神急行電鉄株式会社の路線中、京阪線大津線を分離
して京阪電気鉄道株式会社を設立し十二月一日より新発足
致します。従いまして営業路線は左の如く相成ります
　　　京阪神急行電鉄株式会社（略称阪急電車）
　　　　神戸線（大阪梅田−神戸）伊丹線、今津線、甲陽線
　　　　宝塚線（大阪梅田−宝塚）箕面線
　　　　京都線（梅田・天六−京都四条大宮）嵐山線、千里山線
　　　京阪電気鉄道株式会社（略称京阪電車）
　　　　京阪線（大阪天満橋−京都三条）宇治線、交野線
　　　　京津線（京都三条−浜大津）
　　　　石山坂本線（石山寺−坂本）
　何卒倍旧の御愛顧の程御願い申し上げます
御乗客各位
　　　　　　　京阪神急行電鉄株式会社（阪急電車）
　　　　　　　京阪電気鉄道株式会社　（京阪電車）