この五声部モテットを構成する11曲のうち、奇数番目の曲はコラール"Jesu, meine Freude"（日本では「賛美歌第二編」の93番「わがよろこび」）またはその変型で、偶数番目の曲は自由曲になっている。この曲は第９曲で、バスを除いた四声部のうち、ソプラノ二声部とテノールのトリオに、アルトの定旋律が絡む。テノールが器楽的に動くから、ちょうどカンタータの二重唱曲やオルガンコラールのような作りだ。

　おそらく葬儀あるいは追悼礼拝のために作られたとされるこのモテットでは、"Gute Nacht"は、死者が安らかな眠りにつくことと、汚濁の現世に別れを告げることの、二重の意味を持っている。