Ophirは、旧約聖書イザヤ書では、シバに属し、黄金や乳香をもたらす地、宝の山。現在でも、南アフリカには、Ophirなる名の金鉱山がある。神を讃えるためにシバから多くの宝物が来るだろう、というイザヤ書のビジョンを借りつつ、カンタータは、マタイ福音書の東方三博士の来訪をテーマに、主顕節新年六日を祝う。しかし、このアリアは、黄金・乳香・没薬という現世の財を否定し、心の贈物を称揚する、禁欲的なトーンを持っている。冒頭から「拒絶」の動機が現れるが、一方、それが器楽三声部の近接模倣になっていることで、旅する三博士の歩みを描写しているようでもある。

　歌詞と音楽の関係は変則的で、歌詞の前半三行(A,B,C)が現世の財物の拒絶、後半三行(D,E,F)が心の贈物の勧めと整然と二分されるのに、二部分に分かれたアリアは、前半が[A,B]、後半が[B,C][D,E,F]を歌う。また、後半の冒頭「去れ、虚しい贈物を持って去れ」が、唐突に冒頭動機の転回形で歌われる意味も、よくわからない。イエスの名前は、冒頭動機と対照的な、山なりの旋律線で三回歌われるが、これまたどういうわけか、冒頭動機に乗せても一回歌われる。