"Jesus Christus, unser Heiland"ではじまるコラールは二曲あり、この曲で使用されているのは、"Jesus Christus, unser Heiland, der von uns Zorn Gottes wand"で、フスからルターを経て伝えられた、聖体拝領の聖歌。従って「オルガン・ミサ」の聖体拝領の二曲(BWV688, BWV689)も同じコラール旋律によって作られている。また、BWV666も同様。

　楽譜上は一見、ペダルに定旋律がある、先行模倣形式のコラールのようだ。しかし、よくよく見ると、コラールの一行につき、同じ音価で四回ずつ定旋律が歌われる、特異かつ整然とした構造になっていることがわかる。しかも、各行につき、(1)アルト(2)五度のソプラノ(3)ペダル(4)ソプラノ、という順序も固定されている。第三行から第四行にかけて、下降半音階と上昇音型が、それぞれ「苦しみ」と「救い」を象徴する、というのはおなじみの手法。