オルゲルビュヒラインやコラールパルティータにでも入っていそうな、小さなコラール。また、ペダルなしで、手だけで演奏するようになっている。ソプラノが、軽く装飾された定旋律を持ち、下三声部が自由に伴奏する。下降してから上昇する音階が印象的で、コラール定旋律の第一節が「上がって下る」形をしているのとの対照が意図されている。この流れるような音階と、三拍子のおかげで、元のコラールとは似ても似つかない、クーラント舞曲のようなスピード感がある。また、元のコラール旋律（日本基督教団編の「賛美歌」にも304番として入る）は、第一節の属音への終止に長三度が使われた直後、第二節が短三度から始まるところが印象深い。これらがうまくマッチしていて、同じコラールをバッハがいくつも編曲している中でも、小さいながら佳品と言える。