1759(宝暦九)年刊弘法大師御詠歌集：三丁表

三丁表

弘法大師御詠歌集序
高祖.かうそ大師.だいしは承和.しようわ二年三月廿一日に。かねてより
定.ぢやうに入らせ給ふ御志.こヽろさしにて。其.その前日.ぜんじつに彫刻.てうこくし給
ふ御遺像.ごゆいざうを。廿日大師.だいしとて尊.たつとみ奉る。かく廿一日と
定.さだめ給.たまふ数.かずに準.なぞらへて。諸國.しよこくに大師巡.めくりの拝礼.はいれい
して。種.しゆゞの利益.りやくを蒙.かふむる。これに依.よつて二十一の数
の得益.とくやくを尋.たつぬるに。或は尊勝.そんしよう陀羅尼.だらに。寶篋印.はうきやうゐん。大
金剛輪.こんかうりん。千手.せんじゆ禅定.ぜんじやう解脱.げだつ成就.じやうじゆ真言.しんごん等.とうは。いづれも

三月廿一日
これにちなんで、東寺の「弘法さん」をはじめとして、弘法大師の縁日は二十一日である。史実としては荼毘に付されたと推定されているが、信仰上は空海は死なず、奥の院の廟に座して定に入っており、弥勒の出現と共に再来することになっている。

諸國に大師巡の拝礼して
諸国に、というのだから、いくつもの大師巡り二十一ヶ寺霊場があったのだろうし、本書でも「大坂廿一ヶ寺」が各御詠歌に配当されている。しかし、八十八ヶ所タイプの地方霊場にとって代わられたのか、二十一ヶ寺霊場はほとんど廃絶し、近代になって創設された「弘法大師越後廿一ヶ所霊場」が行われている程度である。

二十一の数の得益
ここに挙げられている他、金剛界の主要尊である五仏と十六大菩薩を合わせると二十一尊となる。尊勝陀羅尼・寶篋印陀羅尼は、非常にポピュラーだった呪句。尊勝陀羅尼に関係する造形は、日本ではあまりないが、チベット等の仏画に、これの本尊である尊勝仏頂がよく見られる。寶篋印陀羅尼を納める寶篋印塔は、四隅に角のある特徴的な形式の石塔として、寺院や墓地で目にすることが多い。大金剛輪・千手禅定解脱成就真言も同類だが、よりカルト。

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