無量と仰せられるは、限りのないと言ふことなり。妊娠の人の腹の内に、御利益が満ち満ちて、御上人の御名号を、生れる子が握りて出たることは、諸所に数限りなきこと故、筆紙に尽し難し。南無阿弥陀仏の御名号の徳の有難きことは、広大無辺もなきこと、これ仏知不思議なり。故に御念仏を尊み、一心に唱へて、安産を願ふべし、との教へなり。

• 御上人の御名号
  五番の釈に出てくる「御上人の御名号」と同様、明意上人筆の「南無阿弥陀仏」六字名号を指す。しかし、子供が手に握って出てきたものが、単に「南無阿弥陀仏」と書かれた紙片ではなく、明確に「御上人の御名号」であると言うからには、明意上人が制作し配布した「御名号」には、意匠や筆跡等で、はっきりと他と区別できるような特徴があったということなのだろうか。
• かずかぎりなき事
  他の霊験譚と異なり、この霊験は何度も何度も繰り返されたと、釈文は述べている。霊験はともかくとしても、この文章は、安産祈願に名号を受けることが、地元八尾をはじめとする明意上人の活動範囲で、広く行われていたことを示しているとは言えるだろう。