極楽はこの世にあれば、と仰せられるは、先の世ばかりではない、ただ心の持ちやうにある、諸事何事も我分限に応じて、我より上の事は見ずして、心に堪能して、我は結構な身分じゃと思ひ、足ることを知り、菩提心を起して、御念仏を尊み唱ふれば、未来は言ふに及ばず、今も極楽じゃ、との御諭しなり。

• しれば
  上句の「あれば」は順接だが、この「知れば」は仮定なので、本来は「知らば」となるべきところ。自分の心境として「足ることを知っておるので現世も極楽じゃ」という解もできなくはないが。
• ぶんげん
  ここは、身分制度上の限界ということではなく、単に「身の程」「現在の身の上」という意味。
• たんのふ
  「たんのう」あるいは「たんの」が、本来の仮名表記。通常の用法では、実際に欲求を満たして満足する意味だが、ここでは「心に堪能」と、気の持ちようで満足する意。