何事もこの世の徳を、と仰せられるは、例へば、今の我身分では何事をなすともそれ相応に金銭の厭ひはなけれども、それをなるだけ内輪めに致して、諸事に慎み、下々を憐みて、菩提心を求むれば、その徳、自然と子孫に巡りて、先の世のためになるぞ、との御教へなり。

• 下〃をあわられみて
  上の「金銭のいとひはなけれども」と併せて見ると、明意上人のスポンサーであり本書の編集にあたった大坂清心講が、奉公人を使役する、比較的裕福な商人層を中核としていたことが窺える。彼等は、商売の第一線を番頭に委ねて「親旦那」の位置に退き、いくばくかの慈善や宗教的寄進を行いつつ、自身の極楽往生と、身代の子孫への円滑な相続を願っていたわけだ。