千里の水：池
古池（たんつく）
島熊山の頂上部のすぐ裏の谷、奥鬼ヶ谷にあった三段池のうち、最奥部が残ったもの。高い尾根に挟まれた、深くて神秘的な池として一目置かれていたようだ。「千里ニュータウンむかしのはなし」によると、
- 奥鬼ヶ谷に『たんつく池』があり、三段になっていて、一人では奥まではなかなか行けないような谷でした。それは、水が冷たいのと両方が木々でおいしげり暗いからでした。
上新田（奥井善太郎 明治四四）
- 鬼ヶ谷池の奥は深く、谷あいは絶壁になっていました。池の水が干し上っても、又樋柱を入れておくと四、五日か一週間たつと水がたまって来るほどでしたから、その奥はずいぶん深いという証拠です。正月用のうらじろなど多くありましたから、ここへ取りに来ました。谷あいはけわしく、足をすべらせて、けがをした人もありました。
上新田（奥井次郎 明治三四）
- この池は深いすりばち形の池で、池にはまったら、おそろしいものがいて、何かに足をとられたということです。スッポンが住んでいるとも聞いていました。
上新田（谷上勘次郎 明治三六）
- この池には、じゃが住んでいたと聞いています。
上新田（奥井善太郎 明治四四）
現在では、池の周囲は金網で囲われ、周囲からはっきり区切られてしまっているが、池の奥も深い谷が続き、東豊中配水場のある山頂付近からは、急に落ち込んでいる。
山の反対側に「ちょんべが滝」と呼ばれた小滝があったことや、上の「四、五日か一週間たつと水がたまって来る」という記述からすると、島熊山のあたりには湧水があったことが想像できる。今は、山の反対側は大きく削り取られて宅地化されているが、たんつくの側の谷は、両側の尾根が千里緑地の一部（大阪府有地）として保存されていることもあって、比較的原形を保っていると言える。しかし、三段池の二段目以下は、すっかり整地され、道路を挟んで住宅街が広がっている。このため、かつて子供達を怖れさせたような、神秘的な力は、奥の池からも失われてしまった。休日になると、どこからともなく侵入した釣人を、たいてい二三人は見かける。
池の北の尾根には、池を見下ろすように、豊中市立の婦人会館が建っている。また、尾根を挟んだ南側には、オッペン化粧品のバラ園がある。鬼も勝手に両手に花じゃと喜んで、おとなしくしているようだ。
千里の水：池