比較的簡単に作れ、特性の良いサンドイッチ巻き構造の出力トランス(OPT)の製作方法です。特殊な製作方法を避けて出来るだけ基本的な製作例です。

【１】出力トランス製作工程について

全体図 　コアに対して内側から捲線を捲いていきます。捲く順番を示す図です。 　最初に2次捲線1mmφ銅線を150回巻きます。次に、1次捲線0.32mmφ銅線を3137回巻きます。最後にまた2次捲線1mmφ銅線を150回巻きます。

　リード線の出し方の例（図―２）
　コアに対して内側から捲線を捲いて行く時、各捲線の始点と終点を示す図です。リード線の出し方図を見て捲線の種類、捲回数、始点と終点をイメージして下さい。

【２】捲芯筒の製作

• 絶縁紙のカット
  コアの奥行きに合わせて工作用紙を正確に６０mm幅に４枚カットします。同時にクラフト紙（２０枚）と表彰状（４枚）も６０mm幅に正確にカットします。
• 捲芯筒
  工作用紙の６０mm幅にカットしたものを木枠（穴を中心に）に巻きます。３６mmの辺からスタートして、直角に隙間を作らないように硬く巻き付け折り目をつけます。 巻き付けた工作用紙は一旦解いて、正確に折り目をつけ、折り目を付けた工作用紙を木工用ボンドで接着していきます。木工用ボンドが乾燥したら一旦木枠から抜いて、木枠にまた少し油を塗って再度差し込みます。（図―３）

【３】２次捲線

　２次捲線は１mmφ銅線を１５０回巻き。捲線機は使用しません。

• 先端処理
  １．０mmφ銅線の先端部分約１０cm（リード線へ）をラジオペンチなどで直角に曲げ、約１０ｍm幅の布ガムテープで巻芯筒の３６mmの辺に接着。（図―４）
  ここからスタートして銅線を巻いていきます。捲く方向は常に一方向。
• ２次捲線の捲き方
  • １：捲芯の外側約１mm程度余して、捲線間は隙間が無いように巻きます。
    ６０mm幅では１段目は約５０回捲けます。１．０mmφの線はかなり指先に力が必要です。あまり強く引っ張ると木枠が抜けなくなるので要注意。
  • ２：布ガムテープを捲芯の外側から５−６回手前から入れ、外側約１mm程度まできたら捲くのをやめて布ガムテープを接着させます。
  • ３：何回捲いたか確認。ノートまたはメモ帖を用意して捲いた回数を控えておくと便利です。この工程は忘れやすいので、気をつけてください。
  • ４：ローラーを横方向（５２mmの辺）に掛けます。ローラー掛けできない場合は、木槌などで軽く叩いて平坦にします。
  • ５：ニスを下の紙に染み込む程度に塗る。塗り洩れが無いように注意。
  • ６：ニスが乾燥しないうちにガムテープで止まっているところから絶縁紙（表彰状）を捲き始めて１周。余分な長さ分はカットし、捲芯からブレない様に正確に重ねます。そしてマスキングテープで止めます。
  絶縁紙は１段目と２段目までは捲芯の厚みを少なくするため表彰状の用紙を使用。
  ２段目以降は１から６の工程を３段目まで繰り返します。１段の捲回数は捲芯の下の段より同じかすこし少なくなりますが１段あたり約５０回捲けるはずです。
• 終端処理
  ３段目が捲き終わったら、スタートした同じ面で布ガムテープを接着。リード線用に約１０cmの長さを余して銅線をカットし、布ガムテープのところからラジオペンチなどを使用して直角に曲げます。
  最終段の捲線外側は工作用紙を使用して絶縁。マスキングテープでしっかり止めます。
  なお、１段目から３段までで約１３０回から１５０回捲ければ問題ありません。その分２次側の捲回数を調整すれば良い。無理して１５０回捲く必要はなく、絶縁面の安全性を考慮して捲芯の縁から１mm程度は必ず余すようにした方が良いでしょう。
  例えば２次捲回数が１３０回ならば１次捲回数はN１＝３１３７＊１３０/１５０＝２７１９回になります。また外側の２次も同じ１３０回巻きます。
• ２次（外側）捲線
  １次捲線が終了したら再度２次捲線を捲きます。
  先端処理から終端処理まで２次捲線（内側）と同様です。

【４】１次捲線

　１次捲線は捲線機を使用します。

• 先端処理
  先端部分約１０cm（リード線へ）のところから折り曲げて巻芯の１次捲線とは反対側にマスキングープで接着。ここからスタートして銅線０．３２mmφを３１３７回（２次１５０回の場合）巻いていきます。
• １次捲線の捲き方
  • １：捲芯の外側約１mm程度余し捲線が重ならないよう捲きます。０．３２mmφの銅線は６０mm幅の捲き芯に最大約１６０回捲けます。最初はゆっくりと捲線機を回し始めます。捲回数の進み方に合わせて銅線を送る方の位置も徐々に場所を移動させます。捲線が重なったらすぐに捲くのを止めて捲き戻します。捲き戻した回数を記録して正確な捲回数になるように注意してください。
  • ２：捲芯の外側約１mm程度まできたら捲くのを止めます。
  • ３：何回捲いたかカウンタから確認してノートまたはメモ帖を用意して記録します。また捲き直した回数も記録しておきます。この工程は忘れやすいので、気をつけてください。
  • ４：そのままで下の紙に染み込む程度にニスを塗ります。
  • ５：ニスが乾燥しないうちに絶縁紙（クラフト紙）を銅線に挟むようにして捲いて１周します。２ｃｍ程度重なるようにして余分な長さ分はカット。
  このとき捲芯からブレない様に正確に重ねてマスキングテープで仮止め。このマスキングテープの仮止めは途中で取去ります。
  ２段目以降は１から５の工程を２１段目まで繰り返します。捲回数は１段に平均１４９回程度捲ければ３１３７回捲けます。
• 終端処理
  最終の２１段目は３１３７回の２０−３０回手前から同じ面でマスキングテープを入れ、３１３７回捲いたならば捲くのを止めてマスキングテープを接着。
  マスキングテープのところからリード線用に約１０cmの長さを余して捲線をカットして直角に曲げます。
  このあとニスを塗り工作用紙で絶縁。

【５】組み立て

• 捲線へのリード線取付け
  捲芯がある程度乾燥したら、リード線の出し方図（全体図のページにあります）を見て捲線の種類毎に始点と終点を確認してリード線を取り付けて行きます。
  捲芯の外側絶縁紙のリード線部分にガムテープを貼り下地処理をします。
  銅線は紙ヤスリで被覆材をよく剥しておきます。
  銅線１．０mmφはリード線の方を捲きつけ、銅線０．３２mmφはリード線に銅線を捲きつけます。
  リード線と銅線を巻きつけたらハンダ付けしてガムテープで接着します。
• マスキングテープ処理
  外側から中側へ捲芯の角を押えてマスキングテープを強く引っ張りながら全体に貼っていきます。
  次に、コアを入れやすくするため、中側から外側へ４方向貼り、マスキングテープで全体を包むとしっかりします。

【６】コアの組み立て

　出来上がった捲芯にＥ型のコアを同じ方向に差し込んでいきます。（OPTは“つき合わせ”接合）コア厚み５０ｍｍですので約１４０枚近いコア使います。

　Ｅ型コアが組み上がったらコア全体に希釈したニスを塗り染み込ませ、特に鉄心の部分は充分染み込ませてください。

　スペーサーはこのトランスの設計では0.25ｍｍ、実際は組合わせの隙間ができるのでクラフト紙１枚程度で十分。クラフト紙１枚を１１０ｍｍと４５ｍｍの大きさに切りスペーサーとします。

　E型コアの上にスペーサーを挟みながらＩ型のコア（５０ｍｍ）を載せます。Ｉ型コアはE型コア厚と同じ厚み。

　Ｅ型とＩ型を組み合わせ終わったらコア全体に希釈したニスを塗り染み込ませ、硬質ゴムのハンマーでコアを軽く叩きながら整形。

【７】カバーと脚の取付け

　コアの大きさにくり抜いた工作用紙をコアの両側に挟みます。

　カバー、脚にはニスがつかないようにミシン油　チークオイルなどを薄く塗っておき、カバーの穴にリード線を通して同じ方向出るようにカバーをコアの両側に被せます。

　脚をリード線が出ている方（下側）に付けます。

　真鍮のゼンネジには上部は６４mm、下部は脚の分で６８mm（脚の分長い）にそれぞれ２本カットし、ゼンネジにはパッキント用のテープを巻いて絶縁。

　袋ナットを両側から軽く締めて硬質ゴムで叩きながら整形。特にE型とI型の隙間が拡がらないように調整。調整した後にコアの隙間からニスが浮き出して来るまで強く締め付けます。

　これで一応完成です。