• ラジオ受信機<特に携帯用セットの小型化は、現時に於ける頗る興味ある問題であるが、この要求の達成には超小型の而も低プレート電壓、小フィラメント電力で動作するやうな眞空管を必要とする。空間電荷四極管はこの問題に對する一つの解決法である。この種四極管の特徴は高相互コンダクタンスで、而も三極管より低いプレート電壓で動作する事である。第十一圖はかかる四極管の一例を示すもので、第十二圖は其の特性である。プレートは圓筒型構造を有し最大プレート電壓、空間電荷グリッド電壓夫々 22.5 ヴォルト、60 ミリアムペアで働く様に作られてある。
• 第十二圖より明かな如く、空間電荷グリッド電流の大なる事が缺點である。之の空間電荷管を利用した小型ラヂオ受信機の試作品を第十三圖に掲げたが、放送受信機として頗る良好な動作を示した。

	第十一圖 極小型と一般型眞空管の比較
第十二圖 極小眞空管（第十一圖）の静的特性
第十三圖 極小型眞空管を使用せる放送聽取用受信機

　小型・低電圧の特長から、この球は軍用無線機にも採用された。しかし、たぶんコストの問題からか、あまり定着しなかったようだ。

　1962年の東芝のハンドブックでは、空間電荷四極管であることが忘れ去られたのか、単に「検波・増幅用４極管」として記述されており、μの値も誤植があるようだ。下図は、同類の空間電荷グリッド管 111/111B による補聴器回路（吉田洪二『速應遅復繼電器』<T1937.9>）で、最初の２本が22V電池で動作する増幅器、最後の１本は、無信号時に出力管をカットオフにして雑音を抑止するリレー回路になっている。