降誕節第一日のための、クリスマス・オラトリオ第一カンタータ、しかも、ルカ福音書のイエスの誕生を告げる部分が語られる直前のコラール。ここに、バッハは、マタイ受難曲でイエスの死を受けて歌われたBWV244/62と同じ旋律を、同じ調、共通点の多い旋律装飾で置いた。属長三和音から入るため、教会調的な古風な響きがするが、この和音は、BWV244/62の終止の和音と同じであり、しかも、この曲はBWV244/62と全く同じ最後の一小節によって、再び属長三和音に帰る。単に、受難のコラール旋律を採用した（クリスマス・オラトリオのフィナーレ、華麗なトランペットを伴って「敵の軍勢」に対する勝利を歌う場面にもまた、バッハは同じ旋律を使っている）ばかりでなく、こうしたBWV244/62を暗示する編曲を、バッハはおそらく意図的に行って、イエスの人の世での始めと終わりを、一つの円環として閉じようとした。

　一方、ここでの歌詞は、救世主への期待に満ちたものだが、バッハは、その中に漂う迷いととまどいを、より強く感じ取ったのか、非常に繋留の多い和声で、合唱におずおずとした感じを与えている。この瞬間には、まだ救世主は世に出ておらず、人はまだ信ずべき道を示されていない。