高津社の南方にあり「北向き不動」あるいは「夢見せ不動」として信仰を集める。戦災で記録が失われたが、寛文年間(1661〜1673)を中興開基とする。
- 攝陽群談巻第十二(1701)
報恩院
同所(西成郡西高津町)にあり。眞言高野山發光院末寺也。
高津社の北方にある。宝暦当時は、高津社の鳥居より更に南にあったようだが、天明期以降の地図では概ね西寄りに描かれ、攝津名所圖會大成の「梅の橋の傍」という記述、及び同書挿図の「だいし」「くわんをん」の位置もこれに適合する。1676(延宝４)年没の権大僧都俊栄開山。疳虫封じで信仰を集める。
- 攝陽群談巻第十二(1701)
自性院
同所(西成郡西高津町)にあり。同宗高野山三寶院末寺也。 - 攝津名所圖會大成巻之四(1855-)
瑜伽權現社.ゆがごんげんのやしろ
梅の橋の傍自性院.じしやういんの寺境ニあり
粟嶋祠.あはしまのやしろ 同上
觀音堂.くわんをんだう 同上
四國靈場遍禮堂.しこくれいぢやうへんれいたう
右同所觀音堂.くはんをんだうの傍.かたはらニあり四國八十八箇所の本尊.ほんぞんを安置.あんちし其.その靈場.れいぢやうの土.つちをことヾヽく取.とりよせ此地にしくと言り
ミナミの古刹（行基創建の大福院に遡るとする）として著名な寺だが、近世初期には三津寺自体は廃絶同然で、修験者が大福院の名で寺院を維持しており、やがてそれを母体として「三津寺」の寺号が復興されたのだろう。御堂筋と三津寺筋の交点によく目立つ鉄筋建築があるが、本堂の観音堂は近世末期のものが戦災を免れて残っている。
| 宝暦九年版 攝州大坂画圖 | 
| 道頓堀 左から 戎橋 太左衛門橋 相合橋 戎橋左上が三津寺大福院 下方は法善寺・竹林院 下端は千日墓所 明暦三年(1657)版 新板大坂之圖には 記載なし |
- 攝陽群談巻第十二(1701)
三津寺
大坂順禮卅番西成郡大坂の市中三津寺町にあり。寺記云、上古難波の洲中にして、古樹岸にあり、仁徳天皇の御宇、於于是靈光あり、使人令見之、則十一面大悲閻浮檀金一寸八分像一躯を得給ふ、此尊容歴世に傳り、聖徳太子渇仰し給ひ、自ら亦十一面の木像を手造し、金像を腹内に籠納め當院に安置傳來せり。天竺・震且・和朝三國一佛を以つて、三寺と稱すと云云。亦難波の地名を以つて、三津寺と云ふとも云へり。鋳像降臨の古樹。末葉の楠。今猶院内に殘り、夜燈を梢に置て、常に祭之。洛陽仁和寺末派古義眞言僧大福院守之。 - 攝陽奇觀巻之五
南水雑志巻之一- (書込)（立像四尺八寸）大坂四國八十八ヶ所遍路四十六番札所准當寺讃州志渡寺 いささらは今宵はここに志渡の寺みのりのこゑを耳にふれツヽ
- 右(攝陽群談巻第十二)大木の楠は惜むべし寛政三年十月類火に枝葉悉く焼失して纔に殘る
- 古圖ニ三津の里三昧寺とあるは今の三津寺にや此地折節は土中より石塔の舊を掘出ス事あり
- 攝陽奇觀巻之四十一
寛政四(1792)壬子- 一 三月 島之内三津寺ニ而勢州關ノ地藏開長(ママ)
- 摂津名所図会巻之四(1798)
三津寺.みつてら
三津寺筋にあり。古義真言宗大福院と号す
本尊十一面.めん観世音.かんぜおん
行基.ぎようきの作、長.みたけ五尺八寸。寺説に云ふ、行基菩薩開基したまふなりとぞ。『新古今』に「難波のみつの寺にて芦のはのそよぐをききて」とある前書の和歌は、天王寺の事ならんか。またあるが云ふ、三津八幡.みつはちまんの神宮寺.じんぐうじといふ説あり。その証詳らかならず。境内.けいだいに大木の楠.くすのきあり、周.めぐり五尋半.いつひろなかば。惜しいかな、近年の火災に枝葉焼亡す - 攝陽奇觀巻之四十八
文政五(1822)壬午- 一 四月一日より 島之内三津寺無縁灌頂
- 攝津名所圖會大成巻之十三下(1855-)
三津寺.みつでら
嶋之内三津寺町ニあり古義眞言宗.こぎしんごんしう大福院と號す
本尊 十一面觀世音.ほんぞん じういちめんくはんぜをん
行基.ぎやうぎの作長.みたけ五尺八寸寺説.じせつ云行基菩薩開基し給ふ也ト先板名所圖會ニ見へたり
脇檀.わきだん
左弘法大師右藥師如來
地藏堂.ぢざうたう
本堂の前東傍ニあり延命尊を安す
楠大樹.くすのたいじゆ
堂前.だうせんニあり近世火災.くわさいのために枝葉.しえふ焼亡.せうばうす今わづかに幹.みきのこれり周.めぐり凡五尋餘.いつひろあまりと云焼.やけのこりの幹.みきの洞.うつぼに如意輪觀世音.によゐりんくわんせをん地藏菩薩.ぢさうほさつ等.とうを安置.あんちす當寺.とうじハ浪花市中.しちう繁昌.はんじやうの地.ちなるうへ觀音.くわんをんめぐり第三十番の札所.ふたしよ且.かつ大師.たいしめぐり廿一番の打どめなれバ詣人.けいじん常.つねに間斷.かんたんなく頗.すこぶる賑.にぎわしき寺院.じいんなり