生玉十坊の一坊として名が見えるが、廃仏毀釈後の消息不詳。
- 攝陽群談巻第十二(1701)
持寶院
同所(東生郡生玉社僧坂口西側)にあり。宗派右(眞言宗古義高野山寶性院末寺)に同じ。 - 摂津名所図会巻之四(1798)
社僧
桜本坊・新蔵院・遍照院・曼陀羅院・観音院・医王院・地蔵院・覚園院・持宝院
創建の地「法円坂」の地名の起源とも言われる法案寺。長く生玉社別当を勤め、隆盛を誇った。寺伝、推古天皇(539〜628)聖徳太子創建。廃仏毀釈後は現島之内の南端、道頓堀川に近い所に移転している。宗右衛門町等の歓楽街に近く、聖天や弁天といった「濃い」信仰対象を有しているので、現世利益を願う人々の信仰が根強い。
| 宝暦九年版 攝州大坂画圖 | 
| [中央上]高津社
[高津社下]自性院 [自性院下]報恩院 [報恩院右下]曼陀羅院 [曼陀羅院下(円形)]弁天 [中央下]北向八幡 [報恩院下]桜本坊 [桜本坊下]新蔵院 [新蔵院下]遍照院 [桜本坊左]観音院 [観音院下]医王院 [医王院下(白色)]南坊 [南坊下]生玉社殿 [生玉社殿下左]持宝院 [持宝院右]覚園院 [覚園院右]地蔵院 [弁天右(下側)]持明院 |
- 攝陽群談巻第十二(1701)
南坊
東生郡生玉社僧也。境内に歡喜尊天を祭り。密法を修する處也。 - 摂津名所図会巻之四(1798)
南坊.みなみのぼう
社頭の北にあり。社僧貫首.かんしゆとす。真言宗志宜山法案寺と号す
稲荷祠.いなりのやしろ
南坊庭中にあり。いにしへは御城中に有りて榎稲荷.えのきいなりと称す
石灯炉.いしどうろ
南坊庭中にあり。豊臣秀頼.とよとみひでより公の御寄附なり。奇石、高四尺
弁財天祠.べんざいてんのやしろ
活玉.いくたま社境内門前北側にあり。伝へ云ふ、むかし海中出現の霊像なりとぞ。毎年正月七日富会あり
妙見祠.みようけんのやしろ
同所西向にあり。諺に云ふ、聖徳太子天より感得したまふなりとぞ。この二祠南坊支配なり - 攝陽奇觀巻之五十四
文政拾二(1829)己丑- 一 (正月)廿二日 生玉南坊冨初而興行
- 攝津名所圖會大成巻之四(1855-)
眞言坂.しんごんざか
高津社.かうつのやしろの鳥居.とりゐの西ニあり此坂を上れバ生玉の社僧.しやそう左右.さいうニ列.れつせりいづれも眞言宗.しんごんしうなる故ニ斯ハ名づくなるべし凡寺毎ニ弘法大師の御影堂ありて浪花大師めくりの札所なるゆへ詣人常に間斷なし又坂を上りて左の第一を櫻本坊といひて此寺内に秋葉の祠觀音堂等ありて參詣の老若殊に多し
辨財天堂.べんざんてんだう
同(生玉馬場前)北側.きたがはにあり傳云 いにしへ海中.かいちうより出現.しゆつげんありし靈像.れいざうなりとぞ例年.れいねん正月福.ふくの富.とみありてにぎわし生玉社僧南坊これを守る
聖天堂.しやうてんだう
社頭の北ニあり大聖歡喜天を祀るいたつて參詣多し
稻荷社.いなりのやしろ
天堂の東傍ニあり
繪馬舎.ゑまや
天堂の前ニあり
南坊.みなみのばう
同西方ニあり社僧の貫首たり眞言宗志宜山法安寺と號す
石燈爐.いしどうろう
南坊の庭中ニあり豊臣秀頼公の御寄附にして奇石なり
社僧.しやそう
櫻木坊 眞蔵院 遍照院 曼陀羅院 觀音院 醫王院 地藏院 覺園院 持寶院等九ヶ寺 貫首南坊を合せて十坊と稱す
次の曼茶羅院の後身と伝えるが、二十一ヶ寺には十一・十二番として並び、近世史料・古地図でも曼茶羅院とは別寺院。持明院が曼茶羅院を吸収合併して存続したと解釈するのが妥当。曼茶羅院が生玉社僧であるが故に神仏分離で立ち退きを余儀なくされたのに対し、持明院は独立寺院（攝陽群談のみは「生玉社僧」とする）であったために、存続が容易だったのだろう。攝陽奇觀所収の大坂地蔵巡りの三十二番持明院。また、境内の金毘羅祠を、法善寺の「下の金比羅」、高津の「中の金比羅」に対して、「上の金比羅」と称し、近世後期には、十月十日に三所金比羅に詣でることが流行した。明暦三年(1657)版「新板大坂之圖」では生玉表参道の南側だが、宝暦九年版「攝州大坂画圖」では北側になっている。
- 攝陽群談巻第十二(1701)
持明院
同所(東生郡生玉中寺町東側)にあり。生玉社僧眞言宗古義高野山寶性院末寺なり。 - 攝陽奇觀巻之二十四ノ上
寶永五(1708)戊子- 一 大坂地藏巡リ初ム
佛土山十萬寺第六代主説空なる僧大坂におゐて四十八ヶ所の地藏巡禮を初め猶諸人に信心なさしめん爲に十輪經および占察經本願經延命經の要文を直談して地藏菩薩の大慈大悲深重なる事を示せり曾又順禮所を四十八ヶに定る事や此菩薩身を四十八種に分て衆生を利益し給ふに表ス猶委しき縁記あれ共爰に略し四十八ヶ所の巡禮の寺々は左に記ス- いくだまばヽさき
卅二ばん 持明院.じめういん
五寸弘法.こうぼう乃さく
- いくだまばヽさき
- 一 大坂地藏巡リ初ム
- 摂津名所図会巻之四(1798)
北向八幡宮.きたむきはちまんぐう
活玉.いくたま門前南の方蓮池の側にあり。生玉の社司松下氏守護す。勧請.かんじようの初めは慶長年中城中の諸士この地において射御の稽古場によつて八幡宮を勧請しけるなり。今五月五日の流鏑馬.やぶさめはこの遺風なり。地名も今において馬場前.ばばさきといふ。北向は御城守護の謂.いひなり
金毘羅権現.こんぴらごんげん
生玉鳥門の西にあり。持明院と号す。古義真言宗。本尊には聖観音、長.みたけ三尺五寸、飛騨内匠.ひだのたくみの作を安置す。金比羅権現京師御室.おむろ仁和寺宮.にんわじのみやより御寄附にして当寺の鎮守とす。毎月十日には遠近より歩.あゆみを運びて群をなせり - 攝津名所圖會大成巻之四(1855-)
金毘羅社.こんひらのやしろ
生玉の馬場前.ばヽさき持明院.ぢみやういんの寺内にあり當神像.とうしんざうハ京洛.みやこ御室仁和寺宮.おむろにんなじのみやより御寄附.ごきふにして當寺の鎮守とす例月九日十日にハ遠近より詣人ありていと賑わし