天満与力町（天満宮の北方）、寺町通に面して寺院が並ぶ。寺伝、825(天長２)、空海開基。また、貞観年間に菅原道真が帰依したとの伝を持ち、菅原山天満寺と称する。
| 宝暦九年版 攝州大坂画圖 | 
| 天満与力町 上段寺町 左から十番目が宝珠院 下段中央は天満宮 明暦三年(1657)版 新板大坂之圖には 法衆院と表記 （位置同じ） |
- 攝陽群談巻第十二(1701)
寶珠院
同所(天満東寺町)次にあり。天満寺と號す。本尊大日如来は。弘法大師の手造也。眞言宗新義洛陽仁和寺末院に屬す。 - 摂津名所図会巻之四(1798)
宝珠院.ほうじゆいん
天満東寺町にあり。相伝ふ、菅神影向の時、初めてここに鎮座ましますゆゑ、菅原山天満寺宝珠院といふ。古義真言宗
天満宮
境内にあり。神像長.みたけ七寸。当寺は初め弘法大師の開基にして、本尊には大日如来を安置す
高津の寺院密集地帯の東端、真田山との境近くの旧小橋（をばせ）村。寺伝、聖徳太子在世中、法円坂に創建、行基中興。
| 宝暦九年版 攝州大坂画圖 | 
| 小橋寺町 真田山と宰相山の間 上から二番目が興徳寺 明暦三年(1657)版 新板大坂之圖には 功徳寺と表記 （位置同じ） |
- 攝陽群談巻第十二(1701)
興徳寺
同所(小橋寺町東側)次にあり。眞言宗古義高野山南院末寺なり。
觀音堂
大坂順禮十一番同所境内にあり。本尊恵心僧都彫刻の千手薩
なり。
城南寺町の餌差町との境、高津中学・高津高校に囲まれて並ぶ寺院群の一つ。寺伝では九条関白創建とし、摂津八十八所の創始者である月海上人が再興、高津宮の神役を勤めたが、合併・改称等紆余曲折があり、現在は高津山観音寺となるとする。近代では観音寺は尼寺として続き、現行摂津八十八所第十六番。
| 天保八年(1837)版 天保新改攝州大阪全圖 | 
| 左下は東小橋墓谷筋。 右端は小端寺町の西側。 墓谷筋東側北端の 楞嚴寺に接して觀音院 （餌差丁南側） 天明七年(1787)版 増補大坂圖では 同所は空白 |
- 宝暦九年(1759)版攝州大坂画圖の前掲部分、宰相山の所に、仁徳天皇社が記されている。この場所は、天明七年(1787)版増補大坂圖以降は、稲荷社（真田山稲荷）として表記される社である。高津社が西に移転した後も、宝暦当時までこの地に仁徳天皇社があったことになる。
- もしも、観音院が、当時この仁徳天皇社の社僧として、その境内地にあったとすると、宝城寺等の例と同様に、古地図に院名が現れないことの説明がつく。また、同地が稲荷社になった後、神宮寺であることをやめて、近くの墓谷に独立移転することも、ありそうなことに思える。更に、高津宮の神役を勤めたという寺伝にも比較的適合する。
- 攝津名所圖會大成巻之一(1855-)
高津宮.たかつのみや
（略）秋里湘夕.あきさとしやうせき云.いふ 高津神社.たかつのじんじや上古.じやうごの社地.しやちは小橋寺町.をばせてらまちより餌指町.えさしまちに至.いたる所.ところ也原.もとハ聖徳太子.しやうとくたいし初.はじめて神廟.しんべうを建.たてて祀.まつり給.たまふ其後.そののち 桓武天皇.くわんむてんわう平安.へいあんに遷都.せんとありて洛北平野.らくほくひらのに移.うつし給.たまひ則.すなはち平野大明神.ひらのだいみやうじんと稱.しやうす- 續古今 難波津.なにはづに冬.ふゆごもりせし花.はななれや平野.ひらのの松.まつに降.ふれる白雪.しらゆき 家隆
按するに十二社次第.しうにしやしだい云 平野ノ社第三古關神.ふるせきのしん 仁徳天皇 云々然.しかれバ難波.なにはの神廟.しんべうを洛北.らくほく平野に遷.うつされしによりて平野社と稱.しやうするなり爾有.しかあるを又其後.そののち何代.いつのよとは詳.つまびらかならざれども皇居.くわうきよの舊地.きうちなるを以.もつて京師.みやこの平野社に准.ならひて難波.なにはにも勸請.くはんじやうし平野社と稱.しようせしなるべし其.その古跡.こせき詳.つまびらかならずといへども若.もしくハ天王寺邊.てんわうじへんに南北の平野町といへる有.ありこれら其.その遺名.いめいならん乎.か一.ある古圖.こづに此.この地所.ぢしよを平野.ひらのとばかり記.しるしたり又餌指町.えさしまちの邊.ほとりに神廟.しんべうありしと言.いへるを思.をもへバ今餌指町.えさしまちの觀音院.くはんをんいんといへる寺内.じないに仁徳天皇.にんとくてんわうの社.やしろありこれ其.その遺跡.いせきにして寺.てらは別當職.べつとうしよくの住.ぢうせし餘風.よふうにもやあらん又一説.いつせつに天正年間.てんしやうねんかん遷座.せんざの始.はじめハ今.いまの高津.かうづの地.ちの東北.ひがしきたに有.ありけるよしを言.いへり是.これも同餌指町.えさしまち方角的當せりに年經.としふりし森中.もりのうちに一祠.ひとつのほこらありて土人.どしん仁徳天皇.にんとくてんのうの社.やしろといふ然.しかるを近世.きんせい宰相山.さいしやうやま俗.ぞくニ云眞田山.さなだやまなりに遷.うつして祭祀.さいしし其趾.そのあとをもつて御旅所.おたびしよと號.がうす今尚.いまなほ小祠.せうしありていなりの祠とす
（略） - 攝津名所圖會大成巻之三(1855-)
仁徳天皇古祠.にんとくてんわうのこし
圓珠庵.えんじゆあんの西に隣.となる林中にあり今眞田山の御旅所.おたびしよト云此地天正十三年磐船社.いわふねのやしろ遷座.せんざのとき一端.いつたん此所.このところに遷.うつせし古趾.こしなりと聞.きこゆ
仁徳天皇社.にんとくてんわうのやしろ
同向ひ觀音院.くわんおんいんの内.うちニあり此地.このちハいにしへ聖徳太子.しやうとくたいしの造營.ぞうえいありし社.やしろのありし古趾.こしにして桓武天皇.くわんむてんわうの御宇.ぎよう京師.みやこ平野に遷座.せんざありし趾.あとならんかといふ