例へば、高位高官の御方々でも、または下々非人に至るまでも、月日の御照し下さるのは、同じこと。況や、阿弥陀如来の御慈悲は一蓮托生、御念仏を尊み唱ふるものを、弥陀も御喜び給ふて御念じ給ふ、との御教へなり。

• ひにん
  「非人」は、長い歴史と多様な意味を持つ呼称だが、近世の身分制のもとでは、非人頭支配のもとで最下層身分として位置付けられ、1871（明治４）年の解放令まで身分呼称・職業制限が制度として存続した。一方、非人＝貧人とし、「乞食非人」と並べ称する用法も広範にあった。いずれにしても、本文のように、身分制度の中の人間を挙げる際には、最下層として言及されるのが常だった。歌にしても、釈文にしても、「上は上・下は下」主義をとる安田蛙文の「弘法大師御詠歌集」に比べて、現世の身分上の差別を信仰上では無とする姿勢が際立っている。更に、融通念仏や時衆が、中世以来非人の救済に積極的にかかわってきたことや、清慶寺の先代楽山上人が近在の信仰を集める契機になったのが、非人身分の少年の脚の治療であったこと、明意上人自身も、大和稗田常楽寺での修業時代に非人を教化したとされていること等をも想起するべきだろう。
• 一れんたくしよ
  「一蓮托生」は、現世の仲を誓い合ったどうしが、来世もまた極楽の同じ蓮台に生ずることを願う、という場合に使われるのが普通だったが、ここでは念仏者すべての「一蓮托生」で、いかにも融通念仏的であり、かつ身分の違いを問題としていない。