1868(明治元)年刊明意上人御詠歌集

御詠歌

1868(明治元)年刊明意上人御詠歌集

題箋

御詠哥　　　　　全

見返

河内八尾清慶寺
学阿弥陀佛大行者明意上人

　　　　　　　　御詠哥
　　　　　　　　　　　　廿四首

後見返

　　　　　　　　　　施主
　　　　　　　　　　　　倍榮清

原本頁目次

一丁　　表裏	二丁　　表裏	三丁　　表裏	四丁　　表裏	五丁　　表裏
六丁　　表裏	七丁　　表裏	八丁　　表裏	九丁　　表裏	十丁　　表裏
十一丁　表裏	十二丁　表裏	十三丁　表裏	十四丁　表裏

内容・御詠歌目次

明意上人御略記	壱番　　ねんぶつの	二番　　がくもんは
三番　　ろもかいも	四番　　かりのよの	五番　　なむあみだ
六番　　さくはなを	七番　　のりのみち	八番　　たかきやに
九番　　たヾもふせ	十番　　うへをみづ	十一番　むりようなる
十二番　とりべのヽ	十三番　ありがたや	十四番　ごくらくは
十五番　やまなかに	十六番　ぼんのふの	十七番　ありがたや
十八番　じつげつの	十九番　なにごとも	廿番　　たのまれぬ
廿一番　なにごとも	廿二番　はるをまつ	廿三番　こをおもふ
廿四番　めにはいし	贈　　　よをてらす	跋・奥書

明意上人関連年表（附：楽山上人・清慶寺・四天王寺太子堂再建）

解題

版本、袋綴、縦21.7cm×横15.4cm、本文十四丁。表紙は輪をデザインしたエンボス。
奥書から、大坂清心講なる信徒グループによる編纂であることがわかる。この清心講は、本文中にしばしば登場する大坂の講で、本書に収録されている二十四首の和歌の作者、明意上人のスポンサーである。この清心講については、大坂の商人を中心に構成されていたことが、本文の内容から推測できるが、明意上人個人に対して結成されたものか、あるいは八尾清慶寺の先代楽山上人の講が引き継がれたものなのか、詳しい成立事情はわからない。また、施主として名が記されている、倍榮清なる人物との関係も未考。清心講は、明意上人の死後も、白蓮庵（太子堂再建への明意上人の尽力を記念して四天王寺境内東門近くに設けられた寄所）を拠点として、少なくとも大正年間まで（おそらくは大阪大空襲で白蓮庵が焼失するまで）明意上人の遺訓を守って活動していた（「中河内郡誌」）。
収録されている二十四首の和歌は、いずれも平易で、ほとんどがストレートに念仏信仰を説いている。本書が明意上人の存命中に編集され、編者（清心講メンバー）と彼の交流が比較的密であることが窺えることからも、これらの歌が、明意上人の自作であることは、疑う理由がない。
釈義も平明な文章（文法や文字遣いの上での誤りや不統一から、筆者が複数で、かつ知識階級ではないことがわかる）で、特に難解な教義を付加することもなく、歌意を敷衍し、いくつかの歌については、詠まれた背景を明らかにしている。それらの中には、超自然的な法力を主題にした御利益話も含まれ、楽山上人の病気治療や、大念仏寺本尊天得如来の請雨霊験と同様、融通念仏の信仰において、現世利益的な要素が重要な意味を持っていたことが窺える。
「明意上人御略記」の末尾にもあるように、教訓的な色彩の強い本書所収歌が、書物の形のみならず、地蔵堂に掲示されて、大衆教化の役割を果たすことを、編者は意図していたようだ。しかし、その意図が実際に行動に移されたのかどうかは、わからない。

御詠歌